近代日本の分岐点 深津真澄 著
大正という時代を重視する立場から4人の政治家が登場する。いずれも一筋縄ではいかない人物たちだ。対華21カ条の要求で悪役のイメージが強い加藤高明は、後年、対中不干渉の立場に転ずる。田中義一は張作霖爆破事件で天皇に叱責された事件が有名だが、内外の情勢を見極めようとしたバランス感覚もあった。
平民宰相として知られる原敬は、実は大衆不信が強烈で普通選挙には反対、利権型の選挙を推し進めた。小村寿太郎は、ロシアとの交渉で現実的な外交を進めたが、帝国主義的な視点から抜け出すことはなかった。いずれも功罪相半ばする政治指導者の多面的な事実を伝える。
4人の政治家とともに、戦前はジャーナリストだった石橋湛山にも1章を設けている。力と権益に目がくらみ、大局を読み損ねた政治家たちとの対照が鮮やかである。戦前の無謀な戦争はなぜ起きたのか。その変化の萌芽は、大正期にあったとの提起は重要だ。(純)
ロゴス 2730円
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