靴35足・棋士との対戦権、「福袋」多様化のワケ 流行や世相を反映し、百貨店が戦略的に投入

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百貨店国内首位の三越伊勢丹ホールディングスも多様な福袋をそろえる。基幹店の1つである銀座三越では「あなたがモデルになる権利」を販売。1人限定で税込み108万円。雑誌『LEON』の石井洋編集長が衣装を選定し、同誌で活躍するカメラマン、スタイリスト、ヘアメイクがコーディネートする。

表紙、裏表紙の2カットを撮影し、購入者オリジナルの『LEON』を作成する。撮影で使用した衣装は、購入者にプレゼントされる。

老舗洋食店とのコラボ福袋も

日本橋三越本店では、老舗洋食店「たいめいけん」とコラボレーションした体験型福袋を販売する(編集部撮影)

日本橋三越本店では「たいめいけんの個室で特別パーティを開く権利」を売り出す。2組(1組6人)限りで、税込み10万8000円。日本橋の老舗洋食店「たいめいけん」の本店3階を貸し切り、購入者の面前で三代目の茂出木浩司シェフがオムライスを仕上げるなど、特別洋食フルコースを堪能できる。

こうした参加・体験型の福袋は数量限定のため、ほとんどが抽選販売となる。購入希望者は事前に受け付け指定された百貨店に足を運び、専用応募用紙で申し込まなければならない。

話題性のある福袋をそろえることは、百貨店にとっては消費者の来店を促す動機づけになるというわけだ。また、子どもが飛びつくような福袋を用意すれば、これまであまり百貨店を利用してこなかったファミリー層など新しい顧客層の開拓につなげることもできる。

とはいえ、多種多様な福袋の積極投入は裏返せば、従来の商品詰め合わせ型だけでは消費者を呼び込めないことを物語る。「消費者の目はより厳しくなっている。安くても、必要のないものは買わない」(ある百貨店の担当者)。

インターネットによる通販の急拡大など競争環境が激しさを増す中、移ろいやすい消費者の心をいかにとらえるか。百貨店の現場では、いっそうの知恵と工夫が求められる2018年となりそうだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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