プロが見た「汚部屋」を放置した人々の末路 モノに埋もれた老後の大変すぎる実態

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そのほかにこんな例も。Bさん(70代男性)は、大量のモノを残したまま要介護状態になり、息子に勝手に「生前整理」をされ、思い出の品までどんどん捨てられてしまったなどの悲劇を目の当たりにしました。

以前からお付き合いのあるお客様で、家を増改築されたCさん(70代夫婦2人)がいました。理由は「モノが増えすぎて、家が手狭になったから」。完成後しばらくたって訪問すると、せっかく部屋が増えたのに、部屋数の半分は増改築中に引っ越したときの段ボールがそのまま置かれ、すっかり物置きと化していました。さらに、新しく買ったであろう家電品や健康器具、洋服があふれ、荷物は以前の倍になっていました。

ご夫婦2人暮らしなのに、マグカップだけで80個くらい、歯ブラシは100本以上、タオルやハンカチに至っては、数えることさえ不可能なほど。これだけモノがあふれているのに、奥様は、「そのトレーナー、かわいいわね。どこで買えるの?」と、欲しがるのです。夫の退職金を湯水のように使っていました。

その家の片づけの依頼者は、そんな妻に不安を感じたご主人だったのです。インターネットであまりに手軽にモノが買える時代です。モノに生気もおカネも吸い取られる前に、対策が必要だと感じたのでしょう。

忍び寄る「定年後うつ」「セルフネグレクト」

中年以降、モノを片づけられない人に多く見られるのが、マインドの問題です。「定年後うつ」などが原因で、片づける気力が低下するのに加え、不安から目をそらし、心のすき間を埋めるために次々とモノを買ってしまうのです。中には、人生の目標を見失い、セルフネグレクト(自己放任)状態に陥り、「ゴミ屋敷」や「汚部屋」にしてしまう方も少なくありません。

ふたたび、お客様の例を挙げましょう。熟年離婚をしたばかりの60代男性Dさんです。食品庫にはカップ麺やレトルト食品が大量に詰め込まれ、ダイニングテーブルにも食材や食べ残しがあり、床は散らかり放題で足の踏み場もありません。そんな生活からでしょうか、男性は、かなりの肥満体で高血圧。いつ倒れてもおかしくない状態でした。

家族と離れたことで希望を失い、人生を放棄しているようにも見えました。まさに「セルフネグレクト状態」です。心配した娘たちが、私に片づけを依頼。部屋がすっきり片づくと、心も晴れやかになったのか暗かった彼の表情も明るくなり、生活改善を娘たちに誓ってくれました。

一方、こんな例もあります。ある70代の女性Eさんは、以前からモノを厳選して生きる人でした。依頼は、一人暮らしには広すぎて不便な一戸建てを売り、マンションに引っ越したいので、新しい家の収納と掃除の面倒を見てほしいというもの。

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