内田隆
R35世代のプロフェッショナルが身につけておくと良いスキルにネゴシエーション(交渉)力があります。30代後半から40代にかけては、大きなビジネスディールを結ぶ、企業買収交渉の責任者として決断を下す、会社上層部へ自らの企画を通すなど、あなたの交渉力がキャリア成功の決め手となる機会が増えるはずです。それよりも、日々の生活のすべて、人生やキャリアの選択のすべてにネゴシエーション力は役立ちます。
つまり、人生の選択の成否すべてがあなたのネゴシエーション力次第と言えます。
ですが(残念なことに)、日本人は交渉下手と世界で評されていることも、交渉と聞くだけでネガティブなイメージを持つ人が多いことも事実です(例えば、あなたの同僚やお客様が「私は交渉が得意な人間です」と聞いたら、付き合いづらい気分がしませんか?)。
では、どうして日本人は交渉下手(ネゴシエーションを誤解している)なのでしょうか? その理由は次の2つの誤解があるからです。
1. 交渉とは勝つか負けるかのものとの誤解
交渉とは勝つか負けるかのものゆえ、人間関係や和を重んじたりする日本文化には合わないとの誤解があります。交渉をきちんと学んだことのない人は、ほとんどの場合、交渉を勝つか負けるか(ゼロサムゲーム)ととらえています。ですから、如何に相手に勝つか、そのための駆け引きや政治ばかり考え相手を傷つけています。しかしながら、この勝つか負けるかという考えは既に最先端の交渉では淘汰されています。現在、交渉力の基本的考えは関係構築型交渉術(ハーバード流交渉術、WIN-WIN交渉術など)と呼ぶもので、ハーバード大学のロジャー・フィッシャー教授等を中心に考えられたものです。
関係構築型交渉術の基本的目的は次の3つです。
(1)少なくとも関係を壊すことなく
(2)お互いにとってより良く
(3)実現可能な賢い合意を効率よく得る
私自身、ハーバード大学のロジャー・フィッシャーハウスに招かれ、ハーバードやMITで交渉術を教えるダニエル・シャピロ氏の著書(『新ハーバード流交渉術』(講談社)として日本語訳も出ています)執筆中に意見を求められたり、エクアドル大統領のジャミル・マウア(当時)氏にペルー・エクアドル国境問題における交渉現場の様子や戦略を伺うなどして徹底的に学び活用してきました。結論として、人との関係を重んじるという関係構築型交渉ほど、他人を敬う文化を持つ日本人向きの交渉術はないと思っています。(2)お互いにとってより良く
(3)実現可能な賢い合意を効率よく得る
ですから、まずは「交渉とは勝つか負けるかの駆け引きとの誤解」を解くことこそが大切です。
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