アフリカは「資本主義の限界」を見抜いている 日本人がアフリカ思想から学べることは多い

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若林:彼らが言っているのは、非常に伝統的な価値観に基づくものかもしれませんが、現代的な価値観でもある気がします。かつてユッスー・ンドゥールというセネガルのミュージシャンがいましたが、ピーター・ガブリエルが手助けをすることでグローバルスターになりました。それに対する批判的な視線がアフリカの中にあって、「セルアウト」(商業的成功のみを追いかける姿勢)したと言われているんです。

僕は今のアフリカの音楽を聞いているとちょっと今までと違う感じを持っています。

資本主義的なドライブの中で大きくなっている部分もあるんですが、一方でサウンドクラウドのような、資本主義と離れたプラットフォームがグローバル化している中で、アフリカンミュージシャンが西洋のミュージシャンと対等に発信できているようになっています。その中心にグローバルスケールで盛り上がる、ラゴスという都市があるんです。

虐殺にさえ許しを与えてしまう

山田:ニャムンジョさんの言葉で、大人と子どもという感覚が面白いと思ったのですが。トランプがクソガキである、大人と子どもの対比ですね。大虐殺をした加害者を、「虐殺をした人は子どもなんだ」と、家族全員を殺された女性が赦(ゆる)してしまう。それはアフリカ的なのではなくて、人類がもともと持っているものだと理解できる気がしました。

確かにトランプ的な振る舞いはどう見ても子どもですし、ウォール街で勝つためのゲームだよねというのは、子ども的なやんちゃな感覚そのものです。大人げなさが資本主義の中でブイブイいわせる。大人的なものというのは進化と真逆で、1つのコミュニティの中でそうでなければ成り立たないというのが大人である。その中で西洋近代文明が未熟な子どもというのは、この論文を読んで腹落ちしたんです。

吉川:<思想するアフリカ>という企画で、最初に期待していたことは、アフリカで哲学や思想をやっている人を扱うことでした。でも特集をやってみて、自分が考えている現代の資本主義と逆立ちした形でアフリカのモラリティがあるという印象を持ちました。西洋を<子ども>ととらえるというのには、びっくりしました。

高度で知的で、でもそれを使ってアフリカ人から略奪している西洋人という図式はわかるんですが、アフリカ側から言わせると、「あいつらは幼いんだ、幼いからこそ悪いことをするんだ」となる。そして、「子どもは共同体で育つから、周りがその子にものをわからせてあげるんだ」、という発想がでてくる。これは、想像を絶していました。アフリカの中の現実は相当に苛烈だと思うんです。それでもこういうことを言えてしまう。なんか度量が広いなと感じました。

若林:今回ナイジェリアの音楽を聞いてかなり驚きがありました。いちばん若いミュージシャンはレゲエとかヒップホップとか、US・UK発の音楽の文法を使いますが、ナイジェリアの最近のミュージシャンは、ほかの地域に比べると圧倒的に優雅なんです。音数も少なくて、非常にシンプルです。これが洗練というものかと。20歳そこそこのしょうもないルックスの若者が作っているんですが、ある種の大人っぽさを感じさせるんです。

(構成:高杉公秀)

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