松屋銀座に「GINZA SIXの客」が流れ込むワケ 「脅威」を「好機」にした老舗百貨店の熟練戦術
この好機を逃すわけにはいかない。そこで松屋銀座が仕掛けたのが、百貨店の定番イベントである催事の強化だ。
1900年代初頭に誕生した日本の百貨店は単に店頭での小売りを展開してきたのではなく、地域文化の構築に寄与してきた歴史がある。行楽施設が少なかった時代から「家族で楽しめる場」として、美術展や地方物産展などの催事を頻繁に開催してきた。
高級ブランドなどのテナントを集めて運営するショッピングセンター型のギンザ シックスは、全館で統一した催し物や地域密着型のイベントを展開することが難しい。そのため、松屋銀座は催事強化こそが、ギンザ シックスとの差別化になるとみており、百貨店としての「原点回帰」とも言える催事の再強化に乗り出した。
催事の数は倍以上に増加
松屋銀座では芸術などと絡めた展示会「文化催事」の回数は、年間で10本程度だったが、今2018年2月期は前期(2017年3~8月)だけで16本も実施。下期(2017年9月~2018年2月)も約10本を計画している。加えて、男性用スーツのバーゲンなど売り出しものを中心とする「物販催事」も積極化している。
松屋銀座の催事の特徴は、ターゲット顧客を明確にし、趣味趣向に着目した内容を打ち出している点にある。また、催事と連動した売り場を各フロアに設けて、全館を挙げて取り組んでいることも際立つ。
たとえば、11月末から12月11日まで開催した「ムーミン パペット・アニメーション展」は、同店で4回目となるムーミン展で、最も人気のある催事の1つだ。
今回は12月に公開されたムーミンのパペット・アニメーションで使用された人形やセットの模型を展示。1000種類以上のグッズを販売する物販コーナーも併設した。ターゲットとして設定していたOLや中高年の女性層、家族連れなどが数多く押し寄せた。
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