米国で市民が原発を廃炉に追い込んだ理由 当事者が、カリフォルニア州原発をめぐる攻防を証言

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廃炉に追い込まれたサンオノフレ原発2号機および3号機(ともに出力108万キロワット、加圧水型軽水炉)が運転を停止したのは12年のことだった。同年1月に3号機で三菱重工業製の蒸気発生器から放射能漏れが見つかったことがきっかけだった。ただ、トーガン氏によれば、「蒸気発生器の不具合は廃炉に向けての最後の一撃であり、稼働の停止はカリフォルニアの住民が原発なしで生活できる証拠となったもの」。同氏は「福島原発事故直後からの住民による粘り強い運動が原発を廃炉に追い込む原動力になった」と述べている。

米国でも、原発と立地自治体との関係は日本と似通っているようだ。ジョンソン氏によれば、雇用の確保を理由に立地自治体が原発の維持を求める構図は米国でも存在しており、福島原発事故直後の時点では「選挙で選ばれた人たちは原発問題にまったく関係を持ちたくないという姿勢を見せていた」(ジョンソン氏)という。

また、福島事故以前の情報の多くは電力会社から提供されたものであり、「原発はクリーンであり、安全で信頼性が高く、コストも非常に安いという楽観的な情報ばかりだった」(同氏)。「電力会社のPR部門のトップが地域の開発計画を担当する行政組織のトップを務めていたことや、地元の商工会議所、NGOや環境団体にまで寄付をしていたことも後になってわかった」ともジョンソン氏は述べている。

福島原発事故はそうした地域社会のあり方に、根本的な転換を迫るきっかけになった。原発事故から2週間しかたたないうちに、8800キロメートルも離れたジョンソン氏の地元で売られていた牛乳からも放射性物質が検出された。ジョンソン氏が立ち上がるきっかけとなった。「3人の幼い子どもを持つ親として、妻と私は日本で起きている原発災害の実情や、私たちの家から48キロメートルしか離れていないサンオノフレ原発の安全性を調べた」とジョンソン氏は述べている。

そして、福島原発事故について関心を深めていく中で、「米国の主流メディアが情報を十分に報じていないことや、米政府の西部放射線監視ネットワークが放射性降下物情報を市民に公開していないこともわかった」(同氏)という。

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