米国で市民が原発を廃炉に追い込んだ理由 当事者が、カリフォルニア州原発をめぐる攻防を証言

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ジョンソン氏らは原発の立地状況のみならず、カリフォルニア州の津波の歴史や活断層についても勉強を深めた。そこからも多くのことがわかってきた。2基の原発が海岸からすぐ近くに設置されていることや、活断層にはさまれて建てられていること、半径80キロメートル圏内に740万人もの人々が住んでいることをジョンソン氏は知った。

万一の際は莫大な被害額、内部関係者も重大証言

そして半径30マイル(48キロメートル)圏内の都市の住宅価格を用いて市民グループのメンバーらが計算したところ、住宅価格は4355億ドルにも達することがわかった。この額は米国のプライス・アンダーセン法が規定する原発事故時の賠償上限額である126億ドルと比べた場合、その30倍をはるかに上回るものであることから、万が一、原発が大事故を起こした場合には、住民が多額の財産を失うことを意味していた。

サンオノフレ原発の危険性が認識される中で、内部に精通する関係者も証言を始めた。原発労働者が自身や家族の安全に懸念を持ち始めたうえ、サンオノフレ原発の格納容器を設計したチーフエンジニアが、「格納容器は立地条件に耐えうる設計になっていない。40年の寿命が来たらすみやかに廃炉にすべき。20年の稼働延長は認められるべきではない」と地元市議会で発言。「同原発をめぐる深刻な事態が広く住民に知られるようになった」(ジョンソン氏)という。また、日本から福島原発事故後に避難してきた2家族による市議会での発言も、議員による意思決定に大きな影響を与えたという。

ジョンソン氏ら住民の働きかけにより、ロサンゼルス市を含む地元自治体の議会が相次いで再稼働への反対を表明。連邦上院の環境公共事業委員会でも住民を支持する意見が多く上がった。

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