方向性に関する調査には一般に当てはまることだが、このような調査には中心回帰性がある。たとえば、景況感が悪化している際には「悪くなる」の回答が増加して指数が50を下回ることが予想される一方、その後に景況感が「底ばい」となれば、「変わらない」の回答が増加し、自然と50に戻ってくる。つまり、「底ばい」でも指数は上昇する。
消費者意識指標のうち「暮らし向き」の回答分布の変化をみると、足元で指数を押し上げてきたのは「変わらない」の回答比率の増加でほとんどが説明できる。
「暮らし向き」が底ばいで「変わらない」と回答している人が景気のよさを「実感」しているとは考えにくい。このような指数のクセが「指数と実感のズレ」を生んでいるのではないか。
消費者態度指数を累積値に作り直してみる
また、消費者態度指数は株価との連動性が高いといわれるが、長期で比較すると連動性は低い。これは、消費者態度指数が景況感の変化の方向を示すのに対して、株価は景気の水準を反映しやすいからだろう。リセッションなどの変化が生じる際には短期的に同じ方向に動くが、その後の連動性は低下しやすい。
消費動向調査が調査時点の景況感の変化の方向を示しているのであれば、「景況感の水準」はその累積値で示すことができそうだ。具体的には消費者意識指標「暮らし向き」が「良くなる」にプラス1.0、「やや良くなる」にプラス0.5、「変わらない」に0.0、「やや悪くなる」にマイナス0.5、「悪くなる」にマイナス1.0として指数を再構築して、バイアスを調整したうえで変化の方向を累積してみた。
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