三菱ふそうが100億円の国内投資に動く理由 電動化やコネクテッドで商用車を進化させる

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三菱ふそうが世界で初めて量産可能なEVトラックとして開発した「eキャンター」。66kWhのリチウムイオン電池を搭載し、1充電当たりの航続距離は約100キロメートル(撮影:尾形文繁)

さらに、リストセーヤ社長が「数年以内に全車種のトラックとバスに電動化モデルを導入する」と明言するように、同社は商用車のEV(電気自動車)化に急速に舵を切る(「三菱ふそう、EVトラックで市場奪取の本気度」)。いすゞや日野など国内のライバル他社がEV化に慎重な姿勢を見せる中で、三菱ふそうのEV化への傾注は際立っている。

同社では2022年までに総販売台数に占めるEV車の比率を25%に高める方針だ。川崎工場に最新の設備を導入するのも、EV化やコネクテッド(つながる車)化など技術的に進化したトラックの量産を見据えてのことだ。

新社屋で優秀な人材を呼び込む

三菱ふそうが2018年に建設する新社屋「プロダクト・センター」の完成予想図(写真:三菱ふそう)

新社屋の設計にもこだわった。ここには研究開発の最先端設備を備えるうえ、十分なスペースがあるミーティングルームなど、従業員の働き方や労働環境に配慮している。職場環境の魅力を高めることで、国内外の優秀な人材を社内に呼び込む狙いもある。「(設備や働く環境では)アマゾンやグーグルを意識している」とリストセーヤ社長は強調する。

工場や本社機能の刷新に加え、約200店舗を擁する国内販売網へも積極的に投資する。販売店のリニューアルは、年間5~10拠点を対象に実施する計画だ。また、各店舗に整備効率向上をねらい、最新のタブレット端末や「スマートグラス」を導入する。スマートグラスは、メカニックの目線と同じ位置に装着されたカメラによる映像と音声を通して、不具合の状況を本社の品質保証部門のスタッフとリアルタイムに共有することが可能だ。

一方、海外では、もともとシェア1位のインドネシアに加えて、中近東、アフリカ、南米、ベトナムなど新興国を開拓して販売増を目指す。海外でも国内2強に加えて、中国・韓国メーカーなどが低価格の大型・中型トラックで攻勢をかけるなど競争が激化しており、三菱ふそうも対応を急ぐ。

インドネシアで現地販売会社への出資比率を引き上げたり、ベトナムでは広範なネットワークを持つ地元企業と商用車販売で新たに代理店契約を結んだりするなど、事業再編を進める。ダイムラーは今年10月、乗用車、バン、トラック、バス、金融の5部門を、乗用車、商用車、金融の3つに再編する計画を発表。各部門の販売力や組織力をより強化するのが狙いだ。

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