「40代で育児を始めた人」を待ち受ける"危機" パラレルキャリアで定年後に備えないと…
やはり、「仕事が第一」の忠誠心を求める体質は否めないようです。しかし、その一方、パーソルキャリアやNTTデータシステム技術などの企業では、社外横断プロジェクトに社員を参加させる取り組みを行い、「個々の視野拡大と、引き出しを増やすことにつなげられた」という成果を実感しているとのこと。
「ロート製薬が副業を解禁したのも、東日本大震災にボランティアを行った社員からの『社外活動が仕事に役立った』という提言がもとになっています。時代は変わりつつあり、企業が社員に求めるものも変化していくと考えています」(石山教授)
定年まで逃げ切っても先はない
「1つの企業で働き、同じ価値観の人と過ごすのみでは、変化に対応する能力を培うことはできない」。企業や国の考え方も変化しつつある今、石山教授は「個人に求められていること」についてこう話します。
「AIの台頭で多くの職が消えると予想されていますが、逆に、多様なコミュニケーションを必要とする複雑な仕事は増えるでしょう。つまり、変化に対応する能力や、それを面白がる視点や行動力がなければ淘汰される可能性は十分にあるのです。まずは多様なライフキャリアを築き、異なる価値観の人々とのタッチポイントをつくることが大切。これまでは雇用や貯蓄、家などの『目に見えるもの』が財産でしたが、今後は変化に対応できる好奇心や意欲、健康、社外の人脈など、『目に見えないもの』が重要になります」
「定年まで逃げ切り、住宅ローンを払い終えたら安泰」という考えは、人生100年時代には通用しません。「定年まであと少し我慢すればいい」として、成長のための行動をしないのは、時間を無駄にしていて、もったいないと思います。
「『逃げ切ろう』という考え方は、人生における成長につながりません。たとえば、役職定年で今までの環境との激変に愕然とする人もいるといいます。人生はどんなに計画しても予定どおりにはいきませんし、そもそも、キャリアの時間軸は自分で決めるもの。『人間はいつまでも成長できる』という視座を持って取り組む人は、環境が変化しても生き延びることができます。そして、結果的におカネや人脈、楽しみを得て、定年後の人生も充実できるのです」(石山教授)
定年後に地域などにうまくなじめず、家に引きこもってしまう場合はどうすればいいのでしょうか。
「何をすればいいかわからない人は、『大人の部活動』くらいの感覚で気になることに挑戦し、いろんな場に出かけましょう。ただし、仕事中心の人生を送った方は、名刺や肩書きに頼る人付き合いに慣れているので、注意が必要です。部下に対するような振る舞いや、自分をアピールしたいがために相手の話を聞かないなどの行動はNGです。仕事とはまた違うコミュニケーションが求められるので、能力も磨かれますよ」(石山教授)
目先のことに気を取られ、忙しく過ごした人ほど、ふと気づけば、仕事がなくなった瞬間に、何もなくなる危険性が大きいのです。「幼いわが子を守っていきたい」と思うなら、会社にキャリアを委ねることなく、新たなことにどんどん挑戦していくべし。それこそが、結果的に人生100年時代に失職しないコツなのかもしれません。
(編集協力:博報堂ケトル)
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