HIS、「2020年売上高1兆円」への期待と不安 旅行事業のコスト構造にメスを入れられるか

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こうした先に澤田氏が見据えるのは成長軌道への復帰だ。あくまで社内的な目標としながらも、冒頭のように2020年に売上高1兆円、営業利益1000億円という数字を掲げている。

実際、2017年10月期は欧州の旅行手配会社ミキトラベルやカナダの旅行会社といったM&Aの上乗せ効果もあり、売上高は大幅な増加を達成。今後もM&Aや新規事業の上積みで毎期20%ずつの成長を続ければ、1兆円という売上高の達成を射程圏に捉えることになる。

ただ最大の課題は低収益にあえぐ旅行事業をどうテコ入れしていくか、ということだ。2020年までに今期見通しの5倍となる利益を叩き出すためには、旅行事業のテコ入れが欠かせない。

現在、旅行業界ではネット予約化が急速に進展。オランダのブッキングドットコムや米エクスペディアなど、オンライン旅行会社(OTA)が急激に台頭。両者の取扱高はそれぞれ約8兆円に達し、5000億円程度のHISを突き放している。

店舗は専門店に特化、ネットシフトを加速

そこで澤田氏は「店舗はハワイなど特定の目的地、シニア、ビジネスクラスなど、(対象を絞った)専門店に特化していく」という方針を掲げる。旅行予約は一層のネットシフトを進め、AI(人工知能)を使ったチャットも導入する。そのうえで既存店舗要員の団体営業への配置転換や、現在売上高500億円強にとどまる国内旅行事業の強化なども打ち出した。

ただ、団体旅行や国内旅行はJTBや近畿日本ツーリストなど競合が強みを持つ分野だ。簡単にシェアを奪還できるかは未知数だ。

変なホテルやハウステンボスの陰に隠れがちだった旅行事業の収益構造に手をつけることができるのか。澤田氏の手腕に期待と不安が錯綜している。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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