「高給子なし夫婦」ほど老後資金計画が必要だ 45歳から3600万円で生活水準は維持できる

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次のステップは、貯蓄です。今どきのセカンドライフは20年より長くなっており、30年以上を見据えて資金計画を立てたほうが良いでしょう。仮に年金生活が30年あるとすれば、老後の「月1万円」を確保するためには360万円の貯金が必要となる計算です(インフレと預貯金金利がイーブンと仮定し、利息はここでは考慮しない)。

つまり、老後資金として3600万円確保できれば、将来「月10万円の取り崩し」が可能になり、公的年金と加えて月40万円ライフが可能になります。セカンドライフの所得税・住民税負担は現役時代ほどではありませんし、厚生年金保険料は引かれませんので(もらう側になるので!)、これなら現役時代に近い感覚で老後を楽しむこともできるはずです。

DINKsで一生過ごすことを自覚した45歳からスタートしても大丈夫です。たとえば、老後資金を作る制度として代表的なiDeCo(個人型確定拠出年金)に夫婦がそれぞれ加入し、月1万2000円を積み立てるとします(企業年金のある会社員と公務員の上限額)。元本ベースで216万円が貯まります。年4%で運用益が得られるとすれば、295万円になります。夫婦ともに口座開設をしておけば約600万円が貯まることになります。

iDeCoの掛け金は全額、課税所得から差し引くことが認められています。つまり、月1万2000円積み立てるとすると、年間14万4000円分が課税所得から差し引かれます。所得税と住民税の税率があわせて30%の人なら年間4万3200円も税金が安くなり、15年間の累計では1人当たり約65万円にのぼります。

高所得者ほど税率は高くなり、iDeCoの節税効果はさらに高まります。共働きでどちらも高所得であるケースも多いDINKsはぜひ夫婦ふたりとも口座開設したいものです。

iDeCoとNISAと退職金の3本柱で悠々自適

これに加え、つみたてNISA(年40万円)を夫婦ともに15年積み上げれば元本ベースで600万円ずつの資産になります。iDeCoの蓄えと合わせれば、老後の資産が1800万円になります(NISAの運用益を加えればもっと多くなる)。

さらに、会社からもらえる退職金も夫婦それぞれが満額に近い水準で受けられます(産休や育休に伴う休職期間がないため)。これが夫婦合計で1500万~2000万円くらいになれば「老後に3600万円確保」も決して夢ではないのです。

夫婦それぞれiDeCoに月1万2000円、つみたてNISAに月3万3000円払うということは、月4万5000円、年54万円ずつの貯金ですから夫婦で年100万円くらいのペースで貯められれば、45歳スタートでも老後の豊かさ維持には間に合うことになります。

子育て世帯に「老後のために年100万円貯金」はなかなか実現困難です。子ども1人当たり年100万円くらいの支出は家計に生じているからです。しかしDINKsであれば家計の見直しにより貯蓄は可能であるはずです。

なお、頑張れるならば、もっと目標は上方修正していきましょう。介護のリスクに備えたり、施設の充実した老人ホームの入居予算確保になったり、さらに老後の選択肢が豊かになっていきます。

まずは「老後もふたりで仲良く」を実現するために、45歳から50歳にかけて、老後のための準備を夫婦で話し合ってみてください。きっとそれは実現可能な目標ですし、DINKsのセカンドライフもきっと楽しいものになるはずです。

山崎 俊輔 フィナンシャル・ウィズダム 代表 ファイナンシャルプランナー

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やまさき・しゅんすけ / Syunsuke Yamasaki

1972年生まれ。中央大学法学部卒業。企業年金研究所やFP総研を経て2001年独立。全国紙などで連載。著書に『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』など。

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