米ロ「新軍拡競争」は核近代化が引き金だった 数が減った分で精度の向上に注力

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新STARTの下では、米国のオハイオ級原子力潜水艦14隻がトライデント20発を装備している。トライデント1発当たり、最大12発の核弾頭が搭載可能だ。トライデントIIの公式射程距離は7456マイル(約1万2000キロメートル)で、地球外周の約3分の1にあたる。実際の射程距離はそれよりも長いことはほぼ確実だと、外部の専門家らは指摘する。トライデントIIが搭載する主な核弾頭1発あたりの威力は475キロトンで、広島に投下された爆弾の約32倍だ。

ロシアの放射能ドローン

ロシアも、殺傷力のより高い戦略兵器の製造に余念がない。プラウシェアーズ財団の試算では、米ロともに少なくとも20以上の新型あるいは改良された戦略兵器の製造に取り組んでいる。

ロシアは超大型ICBM「RS‐28サルマト(通称サタン2)」など、新型の地上発射ミサイルを製造している。サタン2は少なくとも核弾頭10発を搭載でき、異なる標的を狙うことが可能。米テキサス州やフランスと同規模の面積を破壊できると、ロシア国営メディアは伝えている。米国の専門家は、その可能性は低いとみているものの、同兵器の破壊力が壊滅的であることに変わりはない。

ロシア軍当局者は2015年、放射能をまき散らす「ダーティーボム(汚い爆弾)」のアイデアを新たな段階へと引き上げ、人類を滅亡させるような兵器を明らかにした。多くの米専門家はこれをはったりだとみているが、同兵器がすでに配備されているとみる向きもある。

この兵器は無人潜水ドローンで、最高速度56ノット、航続距離6200マイル(約1万キロメートル)とみられている。これまで一度も使用されたことのないダーティーボムのコンセプトは、テロリストがダイナマイトなど通常爆発装置を使って有害な放射性物質を拡散するといったものだ。ロシアのドローンの場合、致死的な大量の放射性物質が核爆弾によってまき散らされることになる。

この爆弾には、長期間にわたって有害なガンマ線を発する放射性コバルトが仕込まれている。爆発と風向きによって、放射性コバルトは何百キロも拡散し、米東海岸の大半を居住不能にしてしまいかねない。

ロシア国営テレビで放送されたドキュメンタリー番組によると、このドローンの目的は、「長期間にわたり、軍事や経済活動などに向かない広範囲な放射能汚染エリア」を生み出すことだとしている。

前出の米軍備管理協会のライフ氏は、たとえ構想段階だとしても、このような兵器はロシア政府の「実に奇抜な考え」を示していると指摘。「戦略的に無意味であり、核抑止力として何が必要かという点で、ひどくひねくれた考え方を表すものだ」と語った。

(Scot Paltrow 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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