米ロ「新軍拡競争」は核近代化が引き金だった 数が減った分で精度の向上に注力
トランプ大統領はプーチン大統領との初の電話会談で、オバマ政権下で締結された新STARTを批判し、2021年に失効する同条約を延長するための協議開始をプーチン大統領が提案したところ、それを拒否した、とロイターは2月に報じている。
かつて保有核兵器の強化を支持していた一部の米元高官や議員、軍縮専門家の多くが、今では近代化を推し進めることは重大な危険をもたらすと警鐘を鳴らしている。
実に危険な考え
核兵器のアップグレードは、不信感を和らげ、意図的もしくは偶発的な核戦争のリスクを減らすという新STARTの原理に矛盾すると、彼らは主張する。最新の性能強化によって、米ロの核兵器は破壊力を増し、ますます配備せずにはいられなくなったという。
例を挙げると、米国は戦術兵器として使用可能な「威力を調整できる」爆弾を保有している。
「核戦争を微調整できるという考えは、実に危険な考え方だ」と、米軍備管理協会のキングストン・ライフ氏は指摘する。
同協会幹部の1人で、クリントン政権の国防長官を務めたウィリアム・ペリー氏は、「核戦争により大惨事が起きる危険は現在、冷戦時代よりも高まっている」と述べている。
ペリー氏はロイターに対し、米ロ両国は、核兵器使用の可能性を高めるようなやり方で保有兵器をアップグレードしていると指摘。米国の場合、ほぼ外部の目の届かないところで行われており、「公の場での基本的な議論が何もなされないまま進んでいる」と同氏は語った。
核兵器強化は効果的な抑止力となり、戦争リスクを低下させると主張する人たちもいる。
核兵器を管理する米エネルギー省の高官を1月まで務めていたチェリー・マリー氏は、新STARTによる核兵器保有量の削減によって、米国政府は保有兵器の性能を向上せざるを得ないと述べた。
米国は冷戦時代、相当数のミサイルを保有していたため、たとえ不良品があったとしても軍はそれをただ廃棄することができた。しかし新STARTが1550発に核弾頭保有数を制限していることで、その1発1発が重要になったとマリー氏は言う。
「数が減らされたことで、われわれは確実にそれらを機能させなくてはならなくなった。また、機能すると敵に信じさせることも大事だ」