「専業主婦」が2億円をすでに損している理由 離婚すれば貧困、それほど過酷で弱い立場だ

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「おカネと幸福の法則」から幸福な家庭をつくろうとすると、夫が1人で1500万円稼ぐ「専業主婦モデル」よりも、夫婦が力を合わせて世帯収入1500万円を目指す「共働きモデル」のほうが、ずっと成功確率が高くなっている。

なぜなら、年収1500万円の人より、年収800万円の人のほうがずっと多いからである。これは、1+1=2のような単純な話なのである。

専業主婦には人生の選択肢が少なすぎる

日本では働く女性10人のうち、結婚後も仕事を続ける人は7人。出産を機に退職する人が3人もいる。ところが、専業主婦には人生の選択肢が少なすぎる。ない、といってもいいくらいだ。大学、就職まで男女平等だったのに、仕事をやめて、子どもを産んだ途端に状況は一変してしまう。

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もっとも、頑張って、子どもを育てながら働こうとしても、想像を絶する苦労がある。職場での扱いが極端に変わって、メインのコースからはずされることもしばしば。そんなことが積み重なって、やり甲斐を失い、仕方なく専業主婦を選ぶ人もいる。

ただ、日本の社会には圧倒的な男女格差がある一方で、少子化と人口減のため日本経済は空前の人手不足になっていて、これからますます深刻化していく。超高齢社会とは、高齢者の数が(ものすごく)増えて、若者の数が(ものすごく)少ない社会。「若くて働ける」女の子の価値はどんどん上がっていく。

男性が「僕と結婚して専業主婦になって子どもを産んでください」と言ったら、今の働き盛りの女性は次の4つのことを考えるだろう。

(1)自由がなくなる

(2)仕事のキャリアが途切れる

(3)これまでのように友だちと付き合えなくなる

(4)家族とも気軽に会えなくなる

女性のほうだって自由に使えるおカネがなくなって、再び稼げるようになれるかもわからないリスクを抱え、子育てや家事に追われるのもごめんだと思ったとしても無理はない。

だとすれば、憧れの女の子と結婚したい男性は、「仕事だって続けられるし、家事もちゃんと分担するから、結婚や出産で失うものよりも楽しいことのほうが絶対多いよ!」と提案したほうがいいだろう。こういう選択が幸福な家庭をつくっていく。

今の日本の非婚化や少子化とは、社会が「結婚して子どもを産んでもロクなことがない」という強烈なメッセージを、若い女性に送っていることを映していることにほかならない。

橘 玲 作家

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たちばな あきら / Akira Tachibana

2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。新書大賞2017受賞の『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)ほか、近著の『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書)などベストセラー多数。公式サイト http://www.tachibana-akira.com/

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