好奇心と運の強いヤツだけが一流になれる! 特別対談 松本大×三田紀房(その1)

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マーケットでは、儲かった人が正義

三田:会社のおカネというと、結構な大金を想像するのですが、若い頃にそんな大金の運用を任されたら、ビビリませんか?

松本:何しろ売ったり買ったりする対象が米国債ですから、意外と安全なんですよ。

松本大(まつもと・おおき)
マネックス証券株式会社 代表取締役社長CEO
1963年埼玉県生まれ。1987年に東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズを経てゴールドマン・サックスに勤務。1994年、30歳で同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、マネックス証券を設立。著書に『私の仕事術』、『「お金の流れ」はこう変わった! 』、『この国を作り変えよう』、『トーキョー金融道』などがある。

債券の取引価格は株価と同じように、売り手と買い手の力関係でつねに変動していますから、損を被ることもあります。でも、とにかく巨大なマーケットで、ものすごい金額が動いていますから、売りたいと思ったらすぐ売れる。買いたいと思ったらすぐ買える。そういうマーケットなので、売りたいのに売れないまま、価格だけがどんどん下がってしまうという恐ろしい事態には、直面せずに済みました。

ただ、キャリアを積んでいくにつれて、米国債のトレーディングだけでは満足できなくなります。自分で考えたアイデアをベースにして、それを現実のマーケットで試してみたくなるんですね。そこで、デリバティブという金融派生商品を使って、フロアやキャップ、スワップ、アービトラージといった、さまざまな仕組みを使ってトレーディングをするようになりました。

こうしていろいろな取引を手がけていくうちに、自分が持っている取引高、これをポジションと言うのですが、ポジションがどんどん膨らんでいきました。当時、世界一の規模を誇っていた東京金融取引所に上場されていた3カ月金利先物の建玉の10%を、私が握っていたこともあります。

三田:それだけ巨額なおカネでトレーディングしても、自分の持っているポジションに何が起こっているのかということは、きちっと把握できるものなのですか。

松本:把握していた……つもりです。うん、そこはきちっと把握していましたね。トレーダーにとっては、そこが非常に大切なのです。自分自身がどれだけ正しいと思っていたとしても、マーケットが逆に行けば、それは間違いなのです。これはもう本当にはっきりしているのですが、マーケットの世界では儲かった人が正しいですよ。

ただ、ポジションを取るとき、自分なりの理屈がないと、間違ったときにそこから抜け出すことができません。きちっとした理屈を持っているからこそ、間違いに気づくところもあるわけです。

ちょっと矛盾していることを言っているようですが、大事なことは、自分なりの理屈を持ったうえでポジションを取ること。ただし、その理屈が必ず正しいとは限らないこと。間違えたらすぐにやめること。これがマーケットの世界で生き抜いていくうえでは大事ですね。

三田:結果がはっきりしているという点では、漫画の世界も似ています。

次ページ漫画でマーケットを扱う理由
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