好奇心と運の強いヤツだけが一流になれる! 特別対談 松本大×三田紀房(その1)
「子供たちが運用する」という設定の面白さ
松本:三田さんは今、「インベスターZ」という連載を描かれていますよね。あの発想はどこからきたのですか。
三田:高校野球で甲子園の常連校になっている学校に取材をしたときに思いつきました。取材が終わってから、野球チームの監督さんたちと一杯やっていたのですが、そのとき、彼らがこう言うんですよ。「三田さん、うちはこれだけ高校野球で有名なんだけど、それでも学校経営は苦しいんですよ」ってね。たぶん、その学校の名前を言えば、誰でも知っているような有名校です。それが定員割れをしたんですって。わずかな人数の定員割れにすぎなかったそうなのですが、それでも定員割れが、その学校にとっては一大事だったそうです。
その話を聞いたとき、ふと思ったのです。もし、学校に多額の基金があって、それを運用することで、子供たちの授業料なども全部賄える学校があったらいいのにってね。
松本:その運用を子供たちがやるという発想が面白い。
三田:そう。ひとつのヒントからどんどん発想が湧いてくるわけです。学校は北海道にある、130年の歴史を持った中高一貫教育校にしよう。レベルは開成高校や灘高校くらい。本来、基金の運用は学校の経営側がみるものだけれども、それでは漫画として面白みがない。だから、中学校3学年、高校3学年で、各学年成績トップのメンバーで投資部を作り、そこが運用を行う。運用基金の額は3000億円で、基金はもともと学校の創設者がポンと出してくれた元金を、投資部員が130年間代々増やし続けてきたもの。それを6人の学生が年8%の利回りで運用する。ざっと年間240億円のキャッシュフローが得られるわけです。
松本:正直なところを言いますと、最初、この設定を知ったときは、「あ~、やはり漫画だな~」と思いました。でも、学校が資産運用をするという設定自体は、決して荒唐無稽な話ではありません。よくよく考えてみると、結構リアルな話です。
というのも、米国では「エンダウメント(endowment)」といって、個人や法人から寄付金を募って大学基金を設立し、その運用によって得られる収益によって、大学の基盤整備、研究活動の支援、学生のための厚生施設の整備などが、実際に行われています。
エンダウメントで有名な大学といえば、ハーバード大学やプリンストン大学、エール大学などが挙げられますが、いずれも非常に優秀な運用成績を収めています。たとえばハーバード大学のエンダウメントは、4兆円以上の資産総額を持ち、年間800億円程度の寄付金が入ってきているというのですから、キャッシュフローの面では日本の投資信託よりもはるかに有利です。
しかも、運用利回りも年10%超という優れものです。アイビーリーグと呼ばれる、米国東部の有名私立大学は、学費が非常に高いということもあって、多くの学生が奨学金制度を利用して勉強しているのですが、それが可能なのも、このエンダウメントの運用があるおかげです。