毎年1000億円!「休眠預金」は何に使われるか 「忘れられた口座」で社会問題に挑む
このように長期間取引がない預金は、これまで、最終的に金融機関の収益として計上されてきた。金融庁によれば、直近5年間(2011~2015年度)において、平均1000万口座、金額にして1000億円を超える休眠預金が毎年新たに発生している。
こうした処理は、あくまでも会計上・税務上の要請にもとづく決算上のものであり、金融機関は、収益計上後であっても預金者から請求があれば支払いに応じている。しかしながら、それらを差し引いたとしても、平均して毎年600億円を超える金額が金融機関の収益として計上されている状況にある。
こうした休眠預金をめぐる状況などを踏まえ、2010年以降、政府において、休眠預金を有効活用し、たとえばNPOなどを通じて被災地の人々や困っている人々の支援に役立てることはできないかといった議論がなされるようになった。
その後、政権交代などにより一時的に議論が下火になったこともあったが、紆余曲折を経て、2016年12月、休眠預金の有効活用を目的とした「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」、通称「休眠預金活用法」が成立し、2018年1月に施行されることとなった。
国や地方公共団体が対応困難な社会的課題の解決に活用
休眠預金活用法により、今後、休眠預金はいったいどのように取り扱われることになるのだろうか。
休眠預金活用法では、預け入れや引き出しなどの最終取引があった日から10年を経過した預金を「休眠預金等」と定義し、法施行後に新たに発生する休眠預金を、国や地方公共団体が対応困難な社会的課題の解決に資する活動に活用していくとされている。
具体的には、①子ども及び若者の支援に係る活動、②日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者の支援に係る活動、③地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域の支援に係る活動、に限定して活用されることとなる。ここでは、実際に想定されている休眠預金の活用事例をいくつか紹介したい。
・恵まれない子どもへの対応
まず、貧困家庭の子ども、孤立した子どもの増加への対応である。近年、18歳未満の未婚の子どもを抱える世帯のうち、ひとり親世帯が増加傾向にあり、全体の約7%を占めている(厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」)。
ひとり親家庭は経済的に厳しい状況にあるほか、その子どもたちは1人で夕食を取ることを余儀なくされている場合も多い。休眠預金の活用範囲には、そのような子どもたちのために「子ども食堂」を開設し、地域の住民が無料または低価格で栄養価の高い食事を提供するといった活動が想定されている。
このほか、子どもの外遊びが減ってきているといった課題を解決すべく、住宅地の中にある公園の一角で、地域の住民が子どもの外遊びをサポートする「プレーパーク」を運営するなどの活動も想定されている。
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