いよいよバブルは「終わりの始まり」なのか 米国ハイイールド市場の不気味な兆候とは?

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今、市場で話題になっているニュースの1つに「中国当局がこれまで資産運用商品の販売を支えてきた暗黙の保証を取りやめることへ向けた計画を公表した。中国国内の購入者にとっては寝耳に水のはずだが、まるで何事も起こらなかったかのようだ」というのがある。

この13年で中国の資産運用商品の規模はほぼゼロから約1690兆円に膨らんだそうだ。要するに「これだけのサイズになったのだから、これをデフォルトさせるといった、資金が流出するようなリスクのあることなど、中国政府はできっこない」と思っているのである。典型的な「too big to fail(大きすぎて潰せない)」信仰であり、モラルハザード状態となっている。日本のバブルのときも銀行の巨額の不良債権リスクが指摘されても、「デフォルトを許したら、たいへんなことになるのでできっこない」という信仰があった。

人は見たいと欲する現実しか見ない

ユーフォリア状態の人たちには警告するメッセージなど届かない。サブプライムローンのブームのときも、所得が非常に低く、英語も話せない人たちが豪邸を買うのはおかしいといくら指摘したところで、市場のプレーヤーたちには聞こえないのである。ユリウス・カエサルの言葉に、「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人たちは、見たいと欲する現実しか見ていない」というのがあるが、まさにその状態なのだろう。

一方、中国政府はこの問題の持つ怖さを十分認識しているからこそ、規制を本格化してきている、彼らは学習しているのだから大丈夫、という意見もある。しかしリスクのコントロールは簡単ではない、日本のバブルも政府が高騰する不動産バブルを抑制しようとして貸し出しの総量規制を導入したことがその崩壊の引き金となった。つまり日本政府も崩壊を避けようとしたのにできなかったのである。

サブプライムローン問題のときに、ある金融雑誌の編集長が、周到な取材の結果、かなり早い段階で、当時の状況がたいへん危険で、米国発で世界の金融市場や世界経済が大きく毀損する可能性があるという指摘をしたことがあった。ところが、そのときは世界が不動産好景気に沸いていて、株価も上昇しており、その人の意見など当時の政府も識者も金融業界も大手メディアの上層部もまじめにとりあわなかった。その後その人が正しかったことは時代が証明している。

いま、中国が崩れ始めたら、世界でそれをとめられる体力のある国はない。そして隠蔽の奥に秘められた巨大なマグマのような動きを市場が感じ始めている。現在のハイイールド市場で起きていることは、嗅覚の鋭い投資のプロたちが危険な資産からジリジリと逃げ出し始めていることを示しているように思う。「ちょっとしたノイズに反応しているだけで、本質的な動きでない」と軽んじるべきではない。いまこそ、「終わりの始まり」を意識すべきタイミングなのである。真の姿が見えにくい中国をこそ、目を凝らして見続けなければならないだろう。

土屋剛俊 みずほ証券 シニアエグゼクティブ

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つちや たけとし / Taketoshi Tsuchiya

専門はクレジット、クレジット・デリバティブ。1985年一橋大学経済学部卒。石川島播磨重工の航空宇宙事業本部から1987年野村証券に移り、英国ロンドン駐在、業務審査部を経て、野村インターナショナル(香港)にてアジア・パシフィックの非日系リスク管理部門を統括。その後、チェース・マンハッタン銀行、チェース証券会社を経て2001年より野村証券チーフクレジットアナリスト、野村キャピタルインベストメント審査部長、バークレイズ・キャピタル証券 ディレクターを歴任し、2013年11月より現職。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『財投機関債投資ハンドブック』(きんざい)、『デリバティブ信用リスクの管理』(シグマベイスキャピタル)、『日本のソブリンリスク』(共著、東洋経済新報社)、『入門 社債のすべて』(ダイヤモンド社)

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