いよいよバブルは「終わりの始まり」なのか 米国ハイイールド市場の不気味な兆候とは?

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暴落の入り口にいるのかどうかを判断するためには、何が起きたら暴落につながり、どこを越さなければ調整で済むのかを見極めなければならない。クレジット市場が暴落して市場が崩壊してしまうような展開になるために必要な条件は、金融システムが大きく毀損することである。

日本のバブル崩壊も巨額の不良債権により日本の金融システムが深刻なダメージを受けたことが原因だ。米国サブプライム問題も米国の不良債権がCDO(債務担保証券)などとして世界中に輸出され、それもAAAといった高格付けをまとっていたことから、投資家がリスクを取っているという認識のないまま世界に拡散して、世界中の金融システムを痛めたことがその背景となっている。今回の下落が大きな崩壊につながらないと主張する人たちの根拠は、現在の世界の金融システムは健全だと思っていることだ。

金融村の外にリスクを追いやったことが問題だ

はたしてそうなのだろうか。

確かに世界の金融監督当局は自己の管理する金融界の健全性を維持するために規制を強化し、リスクを取らせないようにした。そうして、個々の金融機関の健全性は高まったかもしれないが、その結果、流動性供給元としての機能が大きく損なわれた。今は世の中が平和だからよいが、下落局面に転じたときに支える重要な担い手がいないのである。たとえば、米国における社債の保有シェアで、米国の証券会社は2007年に3%台を占めていたが、サブプライム危機以降、急低下して現在は、1%に満たない。いざとなったときに、マーケットメイクができるのだろうか。

一方、投資信託の社債の保有シェアは07年の10%から20%に上昇している。投資信託は市場が崩れた時にはそれを加速する方向に動く。相場の下落は投資家が慌てて解約すること通して、売りが売りを呼ぶのである。つまり、現在はリーマン当時と比べるとグローバルマクロや金融システムの安定性が高まっているように思えるかもしれないが、問題が金融村の外に出ているだけで、市場が崩れ始めた時の対応力は圧倒的に脆弱になっているのである。臨界点に達するのがはるかに速くなっている。

また当時の欧米の中央銀行のバランスシートは今よりはるかに余裕のある状態だった。今もし何か起きて、再度、中央銀行が巨額の緩和を求められても余力はほとんどないのではないだろうか。また、リーマン後の世界の崩壊を止めたのは中国の財政支出であったが、今の中国に当時のような勢いはない。それどころか中国自身が震源地になると認識されているのである。

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