授業料330万円!「米エリート幼稚園」の教育 高い授業料は割に合っているのか

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全米独立学校委員会(NAIS)によると、私立の幼稚園の平均授業料は1万8347ドル(約205万円)に上る。都市によって値段はさまざまだが、生活コストが高いことで知られるニューヨーク市では私立幼稚園の授業料は3万ドル(約330万円)以上するところが多い。

これらの費用にはランチ、通学バス、スポーツ用具、テキストなどは含まれておらず、追加で2000ドル(約22万円)の交通費を支払わないといけないところもある。このほか、NAISの調べによると、私立の幼稚園に通わせる親の約6割が寄付金を支払っており、その平均は約1700ドル(約19万円)に上る。

親にかかるプレッシャーも半端ない

私立幼稚園に通わせるのを逡巡する親がいるのは、コストの問題だけではない。私立校ならではの「プレッシャー」もある。米ウォールストリート・ジャーナル紙で教育費について記事を書いているステーシー・ブラッドフォード氏が、CBS(ネット版)に語ったところによると、エリート幼稚園では「ファンシーな誕生日会」や、高額な洋服や最新のガジェット(電子機器)を当たり前に持っている子が少なくない。

「自分の娘が幼稚園から帰ってきて、『どうしてうちは冬休みにスキー旅行に行かないの?』なんて聞かれるようなシチュエーションを考えなければならない」(ブラッドフォード氏)。こうした「ぜいたくな生活」が家庭の価値観と合わなかったとしても、子どもが幼稚園で浮いてしまわないためには仕方ないと考える親もいるようだ。

こうした私立幼稚園ならではの価値観に対して違和感がありながらも、エリート校でしか得られないような人脈や教育環境は価値が高いとみる人もいる。ニュージャージー州在住のファリア・ラツールさんは、現在子どもを幼稚園には行かせず、自らホームスクーリングで教えているが、将来的には私立校に行かせるオプションも残している。

それには、ラツールさん自身が生まれ育ったパキスタンで私立の女子学校に通ったことが大きい。「私立校で質の高い教育を受けられたからこそ、米国に来ることができたし、ここで生活ができるほどの能力を身に付けることができたと思う」とラツールさんは話す。ラツールさんの学校では、早くから英語教育が行われていただけでなく、人と違う発想を持つ力やネットワーキング力などを養う教育が行われていたという。

もちろん、質の高い教育、あるいは、豊かな人間性を育む教育は、高額のエリート校でなくても受けられるだろう。最終的には、親が子どもにどういう教育を受けさせたいか、どういう子どもに育てたいかによるだろう。もしあなたが親だったら、授業料300万円の幼稚園に、いったいどんなことを望み、求めるだろうか。

アイネズ・モーバネ・ジョーンズ ライター/編集者(在シアトル)

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Inez Maubane Jones

アメリカ・ワシントン州シアトル在住。子ども向けの書籍「The Content」シリーズを手掛ける傍ら、自身のブログにて教育トレンドや子育て、社会問題などについて執筆している。

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