この合計特殊出生率は未婚の女性も含むため、女性の未婚率が上昇すれば当然下がってしまうのです。既婚女性の出生率を表す指標としては、「合計結婚出生率」があります。これは既婚女性が一生の間に産むとされる子どもの平均数を示します。
合計特殊出生率と合計結婚出生率の経年推移を比較したグラフを見てみましょう。
グラフからは、合計結婚出生率はそれほど下がってはいないことがわかります。1990年代以降2.0を超えたことはありませんが、それでもずっと1.7~1.9レベルで持ちこたえています。つまり、結婚した夫婦は合計2人弱の子どもを産んでいるということになるのです。逆の見方をすれば、結婚数が1つ増えれば、その分だけ期待出生値がプラス2となるわけで、既に2人の子どもを産んでいる女性に3人目を求めるより、未婚女性の結婚を促進した方が少子化解決に効くと考えられます。
要するに、既婚者の子どもの数が一定である以上、出生率の観点からは未婚者の増加によるマイナス影響が大きいということになります。「未婚が増えれば国が滅ぶ」と言いたい人の気持ちもわかります。
しかし、結婚さえすれば皆子どもができるはず、という思考は短絡的にすぎます。子どもが欲しいと思っていても、事情によりできない人たちもいます。
さらには、物理的に「産めない」女性だけではなく、自ら子どもを産まない選択をする女性も存在します。雑誌『FRaU』(講談社)の2016年3月号では、女優山口智子さんが「産まない選択」を告白したロングインタビューが掲載され、大きな反響を呼びました。個人の価値観や人生観が多様化していく中で、たとえ結婚して夫婦となったからといって、必ずしも子を持つとは限らないのです。
少子化を考える際に重要な「生涯無子率」とは?
さて、ここでふと私が思いついたのは、そもそも生涯で「子を持たない率」という指標はあるのだろうか、という点です。要するに「生涯無子率」です。生涯未婚率という指標は、最近では広く認知されるようになっていますが、「生涯無子率」は耳慣れないと思います。厚生労働省にも総務省の統計局にもそれに該当する項目はありませんでした。2016年に拙著『超ソロ社会』を書く段階で、私は2010年のデータを基にそれを試算して、本に掲載しています。
今回は、最新の2015年の国勢調査のデータ(世帯別と配偶関係別)を活用して作り直しました。計算の考え方としては、「夫婦のみ世帯」の数と未婚者数を足し合わせることで、無子生活者数を割り出すというものです。ちなみに、詳細な家族類型には核家族世帯とその他の親族家族世帯があり、それぞれに「無子世帯」は存在しますが、核家族世帯以外の数は今回合算していません。
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