トランプの強硬姿勢がもたらした意外な成果 ぶちこわされる前に日本含む11カ国が結束?

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そして中国は、総額2535億ドル(28.8兆円!)の巨額商談でトランプ大統領を迎えた。アメリカの対中赤字が年間3672億ドルに及ぶことを意識して、思い切り金額を膨らませたのであろう。ただし「真水」の規模はどれくらいあるのやら。また、アラスカでのLNG開発投資からボーイング社の航空機300機購入まで、さまざまな案件を積み上げてみせたが、個々の事業の採算はどうなっているのか。短期間にこれだけの契約がまとまるのは「さすが中国」だが、まともな市場主義経済ではあり得ない所業であることも間違いない。

もちろんトランプ大統領としては、大盤振る舞いにご満悦であろう。アメリカの雇用のためにこんなに頑張ったぞ!と国内でアピールすることができる。ただしこれらの大型契約が執行段階でどうなるのか。米中関係に新たな火種を作ってしまうかもしれない。

「TPP11」は、トランプ大統領の強硬姿勢のおかげ?

かくしてトランプ大統領は、行く先々で通商問題を振りまいている。しかし同時にプラス効果ももたらした。それは11月9日夜、ベトナム・ダナンで行われた閣僚会合で「TPP11」の大枠合意が決まったこと。察するに交渉の最終段階、共同議長を務めた茂木敏充経済再生担当大臣は、「とにかく今夜のうちにまとめようじゃないか! 明日になったらトランプさんが来てしまうぞ!」と発破をかけたんじゃないだろうか。アメリカの離脱によって崩壊寸前に追い込まれたTPPは、辛くも11か国で妥結にこぎつけることができた。

ベトナムやマレーシアなど、アメリカ抜きのTPPに消極的な国も確かにあった。しかし参加各国としては、将来アメリカが2国間交渉を迫ってきたときに、「ウチはTPPで約束した以上のことは譲れないんです!」と言い張ることができる。日本も同様で、今後、農産物や自動車でアメリカからご無体な要求を突きつけられたら、「だったらオタクがTPPに入ってくださいよ」と言い返すことができる。結果論だが、今回TPP11が妥結に至ったのはトランプ大統領の強硬姿勢のお陰なんじゃないだろうか。

そうだとしたら、心からお礼を言おう。ありがとう、トランプさん。

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