東芝「サザエさん、ラグビーも聖域ではない」 営業益は28年ぶり過去最高の見通しだが…

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それにしても、改めて痛感させられたのは、東芝メモリ売却後の東芝の前途の多難さだ。

何しろ、全社利益の9割以上をメモリ事業が占める。今期の通期予想4300億円には600億円の構造改革費用が含まれているとはいえ、新生・東芝を支えていく社会インフラ事業(発電機器や公共インフラ、昇降機など)の収益力は、いかにも心もとない。

東芝再生の道のりは平坦ではない(記者撮影)

東芝メモリについて、東芝は売却後も当面40.2%の議決権を保有し、持分法で利益を取り込む予定。しかし、東芝メモリは早期の株式公開を目指しており、徐々に遠心力が働くことは間違いない。

さらに、東芝に残された最大のリスクとされる天然ガスの液化役務契約「フリーポート」について、平田専務は「今の目線なら年間100億円の損失は覚悟している。20年間の累計で2000億円になる」と語った。

パソコンとテレビの事業性を見極め

残された事業の収益力をいかに上げていくか。今後、東芝は構造改革費用の600億円を活用し、インフラ事業を中心に不採算の海外現地法人の整理を進める。依然として赤字が続くパソコン事業とテレビ事業についても、事業性の見極めを行っていく方針だ。

長寿テレビ番組「サザエさん」のスポンサーや、ラグビーなどスポーツを含めた企業活動全般についても、平田専務は「経費に見合うキャッシュインがあるのか、すべてを洗っている最中。いろんな可能性が出てくる」と言及した。

東芝の再生のためには、まだ時間がかかりそうだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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