キャリアをつくる9つの習慣 これが価値を生み出す最新の働き方だ 高橋俊介 著 ~予期せぬ出来事を利用したキャリア形成を説く
キャリアを自分でつくっていかなければならない時代となった今、巷ではキャリア関連本があふれている。その点、本書は150ページにも満たないが、見事にキャリアの本質をついており、キャリア形成の王道を行くうえで多くのヒントを得られる好著といえよう。
本書は、キャリアに勝ち負けはなく、現代の変化の激しい時代におけるキャリア形成では、最初に目標を定め、そこから逆算して一歩一歩計画的に積み上げていくことは不可能で、むしろ人生に起こるたくさんの予期せぬ出来事をうまく利用しながら、それを自分にとって好ましいものに変えていくことが重要としており、その点が他書にはない大きな特徴だ。
そして著者は、膨大な調査結果をもとに、満足度の高いキャリアをつくっている人には共通の「9つの仕事の習慣」があり、これらを根気よく習慣化することにより、誰でも好ましいキャリアをつくれると主張する。
「9つの習慣」はどれも教訓的だが、中でも印象的なのは、「勝負能力」だ。これは、大きく分けると三つの動機に基づいており、動機の特徴と組み合わせによってキャリア形成のパターンも変わってくるというのは興味深い。また、「相手の価値観を理解する」ことは、日本でも遅ればせながら注目されつつある「ダイバーシティ」にもつながり、重要なポイントだ。
著者は、この「9つの習慣」に加え、これからのキャリアの条件として、ワークライフバランスではなく、「ワークライフ統合」を主張しているが、この言葉も本質を見事にとらえた名言といえよう。
社会に出たばかりの若い人たちはもちろん、キャリア形成途上あるいは終盤にさしかかった人たちにもぜひ読んでもらいたい一冊だ。
たかはし・しゅんすけ
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。1954年生まれ。東京大学工学部卒業。プリンストン大学大学院工学修士課程を修了。国鉄、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ザ・ワイアット・カンパニー(現ワトソンワイアット)などを経る。
プレジデント社 1000円 136ページ
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