11月2日、英国の中央銀行・BOE(イングランド銀行)が政策金利の0.25%から0.5%への引き上げを発表した。利上げは2007年7月以来およそ10年ぶり。MPC(金融政策委員会)の9人の委員のうち7人が利上げに票を投じる圧倒的多数での決定だった。
緩和縮小という方向では、10月26日に2018年から資産買い入れ額を月300億ユーロに半減することを決めたECB(欧州中央銀行)や、12月の追加利上げが既定路線と見られるFRB(米連邦準備制度理事会)と重なる。しかし、EU離脱に向かうBOEの利上げは、低めの成長の下での高インフレ、通貨安リスクへの対応であり、成長加速と低インフレに直面しているECBやFRBとは性格が異なる。
ポンド安でインフレ高進
英国のインフレ率は、今年2月以降、BOEの政策目標の2%を上回っている。離脱決定を受けたポンド安が輸入インフレをもたらしたことが原因だ。ポンド相場の変動幅は引き続き大きいが、ここ半年余りは、利上げ期待で下支えされるようになっている。それでも、2年前の水準を対ドルではおよそ15%、対ユーロではおよそ20%下回る。
BOEは、ポンド安によるコスト上昇分を価格転嫁する動きが続くため、インフレ率は9月の前年同月比3.0%から、10月はさらに上昇すると見ている。政策金利を史上最低の水準に据え置いたままでは、1年半から2年という期間内での2%の物価目標への回帰は、困難と判断せざるを得ない状況にあった。
世界経済は同時好況の様相を呈しているが、EU離脱を控える英国経済は外部環境の改善をフルに享受できていない。英国の7~9月期の実質GDP(速報値)は、前期比年率1.6%。米国の同3.0%、ユーロ圏の同2.4%を下回った。
外部環境の改善とポンド安で、英国でも輸出は好調だ。しかし、設備投資は、好調な企業業績、高い稼働率、良好な資金調達環境から期待されるほどの勢いはない。EU離脱をめぐる先行き不透明感が重石となっているからだ。
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