自民圧勝で「黒田総裁の次も黒田総裁」なのか 次期総裁・副総裁に名前の挙がる人々

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学者で名前が挙がるのは米コロンビア大学教授の伊藤隆敏氏。インフレ目標の導入を主張していた人物で、旧大蔵省で黒田総裁が財務官の時に副財務官を務めていた。2008年にも副総裁就任候補となっていた。来年の人事で副総裁に選ばれる可能性はある。

財務省出身者が引き続き総裁ポストに着くとの見方をする人もいる。現在の金融政策の運営にあたっては、政府との対話は必要不可欠であり、日銀のプロパーに比べて、国際的に広い人脈を持つなどの点からだ。過去に組織トップを経験していれば、経営面でも強い。

すべては安倍首相次第だが

財務省出身者として名前が挙がるのは、森信親金融庁長官、本田悦朗駐スイス大使、中尾武彦アジア開発銀行総裁、浅川雅嗣財務官などだ。森氏は金融庁長官として銀行再編に辣腕を振るい、安倍政権や菅官房長官と近い人物として知られる。金融庁長官も3期目になり、信頼の厚いことがうかがえる。本田氏はリフレ派で安倍首相の経済政策のブレーンだ。中尾氏は黒田氏の後を継いでアジア開発銀行の総裁をしている。海外とのコミュニケーションの面においても適任と考えられる可能性が高い。浅川財務官は財務官として今年3期目に入り、やはり安倍政権の信任は厚い。

ほかにも財務省出身者では、丹呉泰健日本たばこ産業会長や、勝栄二郎インターネットイニシアティブ取締役社長など多くの名前が出ている。

過去には日銀出身者と財務省出身者を交互に指名する「たすきがけ人事」といわれたが、現在ではそうした慣習も消え、安倍首相が誰を選ぶかに尽きる。事前に名前が漏えいされれば国会で同意できないという議論がされたこともあり、実際には来年2月ころまでわからないだろう。

これまで黒田総裁が担ってきた5年間は、ひたすら「デフレ脱却」を掲げ「2%の物価目標」を目指してバランスシートを膨張させてきた局面だった。これから到来する5年は、ほかの先進国の金融引き締めへの移行や、世界的影響力を持つ中国経済の構造改革の行方など、波乱要因があり、世界経済が景気後退局面に入るとか、危機的状況に陥る可能性も指摘されている。日本もオリンピック特需が終わりを告げ、景気は後退局面に入ると考えられる。そうした中で、火中の栗を拾うのは、誰になるのだろうか。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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