シャープがこだわる「8Kテレビ」に他社は冷笑 鴻海の支援でV字回復、液晶事業に懸けるが…

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市場を牽引するのは、当面4KやHDR(ハイダイナミックレンジ)テレビとなりそうだ。というのも、日本で8K放送が開始されるのは2018年12月とまだ先で、別途受信機も必要となる。さらにNHK以外の民放は、8K放送に必要な巨額投資に二の足を踏む。中国では放送開始のメドすら立っていない。デジタル放送や4K放送、ネット配信の動画を8Kの解像度に変換して鑑賞することになる。

競合他社は一様に有機EL推し

家電量販店には有機ELテレビがずらりと並ぶ(撮影:梅谷秀司)

競合がシャープを見る目は冷ややかだ。テレビメーカー各社がしのぎを削っているのは、8Kの液晶ではなく有機ELテレビ。同業他社の社員は「シャープさんは昔から一本気だから」と苦笑する。

2017年、国内のテレビ市場では東芝、ソニー、パナソニック、韓国LG電子の4社から有機ELテレビが出そろった。家電量販店に行くと、液晶と有機ELの画質を比較するような特設売り場が設けられていることも多い。

有機ELは自ら発光する有機化合物を使ったパネル。液晶のようにバックライトが不要なため、壁に掛けられるほど薄くすることが可能で、画面の切り替えも早い。色のコントラストをはっきりと表示することに長け、暗い場面の多い映画やスポーツ、ゲームなどを観るのに適しているという。

有機ELテレビに注力する他社とは裏腹に、シャープの野村勝明副社長は8Kへのこだわりを強調した(記者撮影)

今のところ、テレビ向けの大型有機ELパネルはすべて韓国LG電子製であり差別化が難しい。だが各社は、独自の画像処理や音響技術で独自性を打ち出し、映像へのこだわりを持つ消費者に訴えかける。停滞するテレビ市場における一つの起爆剤としたい構えだ。

有機ELテレビも8Kと同様、将来の普及に向けて手探りの状態だ。ただ、参入が遅れることへのリスクもある。シャープも有機ELテレビの生産に乗り出すことは明らかにしているほか、スマホなど中小型の有機ELパネルは、来春から出荷が始まる。

それでもシャープとしては「2020年度には60インチ以上の液晶テレビの半分を8Kに変える」という目標を掲げており、8Kへのこだわりはなお強い。液晶パネルを製造する大阪・堺工場への過剰投資で痛い目を見た過去もある。二の舞となることはないのか。シャープの8Kをめぐる“孤独な闘い”は、けっして楽な道ではない。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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