カタルーニャの未来はスロベニアとは異なる プチデモン州首相はモデルケースとするが

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違憲判決の直後に行われたカタルーニャ州議会選挙で独立派の政権が誕生し、翌年のスペイン下院選挙で国民党が社会労働党から政権を奪ったことも、スペイン政府とカタルーニャ州政府との対立を深める一因となった。

不動産バブル崩壊と欧州債務危機の激震はカタルーニャにも影を落とし、裕福なはずのカタルーニャの州財政は破綻すれすれの状況にある。スペインでは州間の格差是正を目的に財政資金の再配分が行われている。スロベニア同様に、カタルーニャ州民の間では巨額の財政資金を他州に吸い上げられているとの不満が根強い。

国際社会は否定的、州民の総意でもない

スロベニアが独立を果たすうえで重要な役割を演じたのが、国際社会の後押しだった。今回のカタルーニャの独立問題をめぐっては、欧州連合(EU)やその加盟国はそろって、内政問題との立場を崩しておらず、スペイン政府を支持している。州政府からの仲裁の呼びかけに応じる国は現れていない。スロベニアの場合、非民主的な体制からの独立であったことやユーゴスラビア政府が軍隊を派兵したことで、国際社会の協力を得られやすかった。カタルーニャの場合、民主的な法治国家であるスペインからの独立を目指しており、州政府側が憲法裁判所の違憲判決を無視して住民投票を強行するなど分が悪い。

スロベニアとのもう一つの違いは、スロベニアの住民投票が90%以上の投票率の下で独立賛成票が圧倒的な割合を占めたのに対し、カタルーニャでは今回の住民投票も2012年の住民投票も独立賛成票の割合こそ多かったが、投票率が50%にも満たなかった。また、州議会が27日に可決した独立決議も、残留支持派の議員が抗議して議場を退出した後に採決が行われた。最近の世論調査でも独立賛成派は過半数に満たない。スペインからの独立がカタルーニャ州民の総意と言うのは難しい。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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