ADK社長が激白する、WPP離縁とTOBの行方 「TOBは成立する、価格は安くない」との根拠は

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――具体的にどのような改革を行うのか?

ひとつは人材だ。必要な人材を増員するだけでは難しい。大幅に入れ替える必要があるかもしれない。専門的なスキルを持つ人材も呼び込む。グループ全体で人材配置を見直すが、希望退職などを考えているわけではない。

また、クライアントの変化は、事業計画からものづくり、仕入れ、販売、コミュニケーションと、すべてのマーケティングプロセスで進んでいる。

クライアントが持つ購買データと、ADKが持つメディアデータ、消費者のデータを組み合わせて固有のデータベースを作り、それをベースにしたソリューションを提供できるようにしたい。データに基づいたマーケティングサポートがちゃんと機能する会社に改革することが重要だ。

「業界で2番目くらいの報酬を目指したい」

――ベインはどういった役目を担うのか?

具体的な事業計画に踏み込んで話をしていないが、われわれが示した成長戦略は了解していただいている。ベインにはその背中を押してもらうような形だと思っている。

ベイン傘下入り後の経営体制については何も決まっていない。現経営陣についても何も保証されていない。私としては先頭に立って構造改革を推進するつもりだが、あとは結果。結果が出なければトップも変わるだろう。そういう場面がすぐ訪れるのか、何年か経って訪れるのかはわからない。

――社員の報酬について、今後どう変えていくつもりか?

植野伸一(うえの しんいち)/1954年生まれ。1976年同志社大学商学部卒業、旭通信社(現アサツー ディ・ケイ)入社、第5営業局長、関西支社長、コーポレート本部長を経て2008年取締役執行役員、2013年から現職(撮影:田所千代美)

われわれは工場などを持っているわけではなく、社員が資産なので、モチベーションを上げることが重要だ。

業界で1番くらいの報酬体系ができればいいとは思っている。いや、やはり1番は難しいかもしれない(笑)。少なくとも2番手と同じくらいにはしたい。

私が社長になって掲げたのは成長戦略だ。

デジタル化への対応や、生産性や効率性、収益性を上げていくことだった。業務プロセスの見直しに力を入れたことで、ここ3~4年で粗利益率は改善し、営業利益も上がってきた。報酬についても決算賞与制度などの新しい試みを始め、社員の報酬は上がってきている。

ただ、全員の待遇がよくなるということではなく、厳しいが成果を出した人には優しい会社、やりがいのある会社にしたい。そうした差をつけるような人事制度の改定をやってきたし、来年以降もさらに制度の見直しを進める。

メリハリのついた報酬体系になるだろう。業界内外から優秀な人材を受け入れられる体系にも変えていきたい。これはTOBにかかわらず進めていくことだ。

――働き方も構造改革に含まれるのか。

健康な頭脳と体を維持してこそ、いい仕事ができる。労働時間の削減にはかなり前から取り組んできた。ノー残業デーを厳格にしたり、人事や上長による指導や有給休暇の取得促進などもだいぶやってきた。

ただし、働き方改革は働かなくていいということではなく、5時間かかっていた作業を3時間でできるようにして、新たな仕事をできるようにする生産性の改革でもある。そうした視点も併せて社員にメッセージを出すように心掛けている。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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