ADK社長が激白する、WPP離縁とTOBの行方 「TOBは成立する、価格は安くない」との根拠は

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――WPPの声明は「日本文芸社やゴンゾなど、悲惨な買収をしている」「ADKはデジタル化を拒否し続けている」など、皮肉に満ちた内容だった。

ああいった言い方をすることもある会社なので驚いてはいない。ただ、声明にあった日本文芸社については、雑誌や出版が厳しいことや、シナジーが薄かったことから昨年に売却しており、「買収」ではない。

アニメ会社のゴンゾについては、コアビジネスであるアニメを強化する中で、大人も見るアニメが得意な同社を買収し、拡大しようと考えている。

投資委員会で事前に検討し、取締役会でも審議して決定した。WPPから派遣されている取締役もかなり熱心に賛成していたのだが。まだ買収の是非について判断する段階ではない。

経営改革は「待ったなし」

――非上場で改革を行う理由は?

上場していると、マーケットに対して短期的な収益を約束し、その目標達成を重視することになる。今は短期的な利益が犠牲になったとしても、構造改革をやる必要がある。躊躇せずに改革するために、非上場にすることが必要だった。

――2014年からWPPとの提携解消、構造改革も検討してきた。

1998年8月、WPPと提携契約調印式を行った故・稲垣正夫会長とマーチン・ソレル代表(写真:『ADK50年史』より引用)

1998年から始まった資本業務提携だが、近年はシナジーを生むどころか、成長の足かせにもなっていた。さまざまな会社と提携したいが、WPPと提携していると、WPPグループのリソースを提示される。それが当社とは合わないケースが多かった。

うまくいかなかった理由は、商慣習の違いに加えて、持ち株会社との提携だったということがある。かつてBBDOというオムニコムグループの事業会社と資本業務提携をしていたときは、われわれも得るところがあったし、BBDOのクライアントが日本で展開する際のサポートなどもしていた。

ただ、持ち株会社が相手だと、何かやろうと決まっても、ワンクッション間に入る感じがあった。WPP傘下の事業会社は競合会社でもあり、一緒にやっていくのは難しかった。

今は変化のスピードが非常に速い。クライアントは変化しており、マーケティングのサポートをする立場のわれわれが手をこまぬいていてはパートナーに選ばれない。

すでに中国では日用品の販売の半分以上がeコマースに変わっている。日本も、アマゾンや楽天などによるEC化の流れが進むだろう。もう待ったなしという状況だった。

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