名古屋「迷駅」が生んだ?4分だけのバス路線 鉄道2路線が通る「ささしまライブ」へ直行

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そこでバスから沿道を見て驚いた。歩道には大勢の人が行き来しているのだ。バスの利用者数については公式発表を待ちたいところだが、歩道を歩く人々はどう見てもバスの利用者より圧倒的に多く、しかも南北両方向に歩く人たちがいる。

どうやら、ささしまライブ24への最も多いアクセス方法は「徒歩」のようだ。さらによく観察すると、バスの乗客は中高年が多めだが、歩いている人たちはほぼ若者だ。

名鉄は、リニア中央新幹線の品川―名古屋間が開業する予定の2027年度までに、駅を再開発する計画を立てている。その計画は、名鉄名古屋駅から南方の笹島交差点までを1つのビルに建て替え、さらに道路を挟んで南にあるビル「名鉄レジャック」と、隣接する日本生命笹島ビルまでも一体開発しようというものだ。最北端から最南端までは400mほどにもなり、東海道新幹線の一編成16両分の長さに匹敵する。

名鉄名古屋駅から約400mにわたる一体運営のビルを建てると、そこが歩道も兼ねることは間違いない。その最南端からささしまライブ24の中心となるグローバルゲートまでは約400mなのだ。グローバルゲートの入口までであればわずかに300mだ。

名駅再開発でさらに変わる風景

いま、この300mの間に目立った商業施設はない。しかし、街と街がつながってさらに大きく発展することを考えると、名古屋市としては、この300mを価値を生み出す区域に変えていくことを考えるべきではないか。すでに若者がいっぱい歩いているのだ。

ささしまライブ24はまちびらきをしたばかりだ。そのまちびらき当初から、あおなみ線と近鉄の最寄り2駅に加えてバス路線もできた。さらに徒歩でのアクセスも多いことがわかった。

この様子から予想すると、10年後のリニア開業時には、リニア駅からささしまライブまで続く、約1.5kmの「名古屋の玄関」が誕生しそうだ。日本有数の距離を誇ることになるこの一大繁華街の成立には、名鉄名古屋駅と名駅地下街の再開発がその鍵を握っていよう。

これまで、北側に建設されるリニア駅と、やや離れた南に位置する名鉄駅・近鉄駅の連絡が注目されていたが、名鉄名古屋駅再開発によりさらに南に位置するささしまライブ24との結節点になれば、名鉄駅は名駅南端の位置づけから、名駅の中核へとその立場が変わるであろう。

1.5kmという距離を考えると、ささしまウェルカムバスは名鉄駅前だけでなく、リニア駅最寄りにも乗降場所が欲しくなる。リニア駅予定地の直上には名古屋駅バスターミナルができ、名古屋市バスとJR東海バスが利用している。その乗り継ぎ利用も期待できそうだ。

鉄道駅は簡単に動かせないし増設も難しい。しかし、バス停なら対応しやすい。迷駅が「名だたる駅」としての「名駅」になるとき、その全体の移動を担うささしまウェルカムバスが果たす役割は大きそうだ。2019年3月までの社会実験ののち、将来を見据えた本格運行になることを期待したい。

伊藤 博康 鉄道フォーラム代表

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いとう ひろやす / Hiroyasu Ito

1958年愛知県生まれ。大学卒業後に10年間のサラリーマン生活を経て、パソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを立ち上げて代表取締役に就任。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退したため、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。鉄道写真の撮影や執筆なども行う。

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