市場リスク 暴落は必然か リチャード・ブックステーバー著/遠藤真美訳 ~単純化が安定性を担保する道と説くが

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
市場リスク 暴落は必然か リチャード・ブックステーバー著/遠藤真美訳  ~単純化が安定性を担保する道と説くが

評者 ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン会長 高橋誠

著者はモルガン・スタンレーの債券部門にいた際、1987年のブラックマンデーに直面し、その後ソロモン・ブラザーズでリスク管理担当時に、98年のヘッジファンドLTCMの破綻に遭遇する。本書のこの二大イベントに立ち会った当事者実名入りのストーリー展開が実に面白い。

ブラックマンデーの原因は、ヘッジ売りがヘッジ売りを呼び、流動性が枯渇したことによる。ブラック=ショールズモデルのオプションの方程式は計算上都合のよい前提のもとに成り立っており、危機のときには役に立たないばかりか、危機を増幅したという。

LTCMの場合は、ソロモン・ブラザーズが収益の柱としていたアービトラージ・グループの閉鎖1カ月後に破綻した。市場にはまたしても、レバレッジのかかった巨大な債券のポジションを解消するだけの流動性がなかったのである。

市場はグローバル化を背景にその結合度合いを深め、複雑性をいっそう増大させている(本書はサブプライム問題化の前に執筆されており、今回の事態も言い当てていたことになる)。新たな市場の暴落を防ぐことは可能なのだろうか。 

著者は問題の根源は仕組みの複雑性にあるとする。市場の予測は根本的に不可能なので、粗く複雑でないものによるアプローチが長期のリスク・マネジメント戦略としては最善の選択であり、金融商品は単純化し、レバレッジを減らすことが金融市場の今後の安定性を担保する道だと結論付ける。

しかし評者には実際にそうなるとは思えない。

金融危機は再び起こる、つまり本書原題の「自らが創造した悪魔」は、「制度上」今後も出現せざるを得ないと改めて確信した次第だ。

日本経済新聞出版社 2520円/447ページ

Richard Bookstaber
フロントポイント・パートナーズのヘッジファンド運用担当。MITで経済学博士。モルガン・スタンレー、ソロモン・ブラザーズ、ソロモン・スミス・バーニー、ジフ・ブラザーズなどを経る。オプション理論やリスク・マネジメントで著作・論文多数。

Amazonで見る
楽天で見る

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事