経理部の不正が明るみに出た会社では、営業が取引先を回るときに「君の会社はなっていない」と叱責されることがあったようです。
このように会社が不祥事を起こすと、度を超えた厳しい場面に遭遇することもあり、それに耐えかねて退職する社員もたくさん出てきます。「この会社に残っても将来は明るくない」と判断して、退職する人もいます。いずれにしても不祥事は人材の流出を加速させるきっかけになりがちなのです。
ところが、中には不祥事が起きたときに「人材が流出しない」会社があります。この違いは何が影響しているのでしょうか?
退職を思いとどまる3つの要因
最近は、日産自動車や神戸製鋼所で製品の性能データ改ざんなど不祥事が相次いで発覚しています。こうした不祥事によって、冒頭のケースのように社員たちが肩身の狭い日々を強いられることになるのは間違いありません。ならば、会社を辞めて転職する……と決断する人がたくさん出てくるか?というと、会社によって違います。会社を辞めないで、そのまま頑張るべきと「思いとどまる要因」があると社員は辞めません。
たとえば、不祥事が起きたときに、会社が潰れるのではないかという将来の苦痛を考える人は、たくさんいます。その「苦痛を避けたい」と、短期的に退職への動機が高まります。ただ、その動機を抑える要因があれば、「辞めずに、もう少し頑張ろう」となります。逆に辞めたい要因がすでにあったならば、不祥事がダメ押しになり退職に至る場合もあります。
つまり不祥事は退職を決断させる最後の一押し、「プラスワンの要因」なのです。でも、プラスされた退職要因をマイナスにさせる要因が社内にあると、決断には至りません。
では、その要因とは何か。これまで多くの企業の現場を見てきた筆者は、3つの要因があると考えます。
その1つが「相対的に好待遇」であること。業界比較や同年代よりも高い報酬。あるいは長期的な勤務で得られる可能性が高い、インセンティブの存在。
たとえば、年々株価が上がる社内持ち株制度や、ストックオプションなど。東芝では社内持ち株制度で年々上がる株価への期待が、社員を辞めさせない要因になっていたといわれます。逆に株価が大きく下がり、将来的にも復活が見込めないと判断した場合には、社員が退職を決断する要因になるかもしれません。
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