「生活保護バッシング」がやまない本質的理由 「陽のあたる家」さいきまこさんに聞く

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こうした不正は、役所が給与や年金の情報を照合することで、簡単に発覚します。不正受給といえば、入念に仕組まれたイメージがありますが、悪意のない「うっかり」レベルのものも相当数あるのです。もちろん、どのようなケースであっても、不正が許されないことは言うまでもありません。

表層だけ見れば「けしからん!」と思うけれど

それから、「私が知っている生活保護受給者は、こんなに心がまっすぐじゃない」という意見。確かに、中には「だらしがない」と思われるような生活をしている人もいます。よくたたかれるのは、支給されたおカネを飲酒やギャンブルに使ってしまうケースです。子どもの養育をきちんとせずに、パチンコをしていたり。

でも、それは「だらしがない」とたたいて済ませられることではありません。ギャンブルがやめられないなら、まず依存症が疑われます。そうであれば、医療につなげるべきです。それに、生活保護でパチンコやギャンブルをするのは、あくまでも一部の人にすぎません。しかも限られた保護費では、つぎ込める金額も知れています。そもそも、支給された保護費の使い道は基本的に本人の自由ですし。

そうはいっても目に余る、と思うかもしれません。でも、「だらしがない」ように見える人には、それなりの背景があります。子どもの頃にネグレクト(養育すべき者が食事や衣服等の世話を怠り、放置すること。育児放棄)や虐待されて育っていたり、文化基盤のない家庭環境で、家計を切り回す知恵を育めないまま大人になってしまったり。

表層だけ見て「けしからん!」と思ってしまう気持ちはわかります。でも、感情で切って捨てられるほど、人の背景は単純ではない。取材していると、そう感じます。

――確かに、たたいてしまう人もいるかもしれないですね。わたしも、そういった背景を、想像しきれないことがあります。

自分が経験していないことを想像するのは、難しいと思います。私も、全部想像できているわけではありません。取材して、初めて知ったことや、見えてきたことがあって、やっと少し想像が及ぶようになりました。

どんなに想像できなくても、「自分の想像が及ばない背景を抱えた人がいる」というのは事実です。その事実を、知っていただけたらと思います。

わたしが漫画を描くのは、そのためでもあります。「貧困は自己責任だ」という人があまりにも多いので、「一見、自己責任に見えるような人にも、こんなしんどい背景があるんだ」ということを、作品で伝えられればと。

わたしの作品を読んで、「こんな状況って特殊でしょ? だって日本は豊かだし、私のまわりには貧困の人なんかいないよ」と言う人もいます。そういう人が住んでいる地域は、「子どもはみんな小学校から私立」だったりします。

貧困は偏在するものです。居住地域や環境によっては、「まわりはみんな、余裕のある人ばかり」になる。だから、そういう人にこそ、お読みいただけたらうれしいです。

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