曰く、自分の父親は仕事ばかりに熱心で、家にいないことが多かった。遊んでもらった記憶は、あまりない。だから、自分は積極的に子供に関わり、一緒に遊びたい。具体的には、家族旅行やキャンプをしたいと。
自身の父親と仲が悪いわけではない。子供のことで盛り上がるという話もあった。ステレオタイプなイメージを確認しつつ、新しい父親像を意識しているというわけである。
しかし現実として、父親の育児休暇取得率はまだ1~2%台にすぎず、欧米に比べると随分低い。さらに、イクメンという言葉が広まった分、今度は「イクメン疲れ」のような現象も起きてしまっているらしい。なかなか一筋縄ではいかない。
父親が育児や家事に参加する程度については、家族社会学などに多くの研究がある。特に大きな影響を与えるのは母親の仕事環境だ。共働きや母親の所得が大きい場合、父親の育児・家事への参加度合いは大きくなる。学歴や居住場所によっても状況は少しずつ変わる。もし、育児休暇の取得促進などを考えるとしたら、こうした影響要因を一つずつ調整していくことが重要だ。
「消費」のかたちから社会の姿が見えてくる
ところで、僕たちが興味を持ち、取り組んでいる研究の主題は、父親や家族の消費行動である。これは意外に大事なテーマだ。人々が何を好み消費するのか、という単純な事実は、彼らがどういう社会に生きているのかに強く関係している。
古くは、有閑階級の理論として、ウェブレンが、当時台頭しつつあった新興富裕層の見せびらかしの消費行動を詳細に記述した。といっても、最上級のアピールとなるのは、ゴージャスに着飾ることではない。レジャーにいそしみ、旅行に出かけ、働かなくてもいいと示すことなのだ。
WASP(ホワイト・アングロ-サクソン・プロテスタント)といわれる上流階級についての考察では、彼らが同じようなスタイルの家に住み、同じブランドの服を着て、同じブランドの時計をつけて生活することが示される。彼らは、特定の消費行動を通じて自分たちの階級や文化を可視化しつつ、外部からの安易な流入を防いでいるのだという。
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