次期日銀総裁に必要な資質と期待すること

自民党の圧勝で黒田総裁は続投なのか?

米国、欧州が出口戦略を進める中で日本だけが緩和状態をそのまま維持すると、2018年は金融政策のベクトルの違いで為替が動く可能性が高まる。円安地合いが継続しやすく、海外から注文や不満が寄せられる可能性がある。これに対応するには、国際会議で渡り合えるだけの人脈と英語のディベート力が求められる。財務官出身の黒田総裁は、この資質を備えている。

一方で日銀という組織を知っているほうが、出口戦略を早く進められるのではないか。副総裁経験者であれば決定会合での議論の流れや、事務局とのやりとりを熟知している。以上より、筆者は財務官経験者、副総裁経験者が望ましい人物像と考えている。

中曽副総裁の講演には白川前総裁の香り

次期総裁に望ましい人物として、市場での人気No.1は中曽副総裁だ。最近の中曽副総裁の講演は、白川前総裁を彷彿させる政策を振り返るものが続いている。5日のロンドン講演で、「今度こそ、真の夜明けが近い」と強気な発言をした。任期も残り半年を切り、環境は整ったと異次元緩和の成果をアピールしているかのようだ。強気の論拠は、労働市場の改革を進めることで、労働生産性が高まっていくというもの。白川前総裁こそ生産性の向上が重要だと力説していたことが懐かしい。

18日のニューヨーク講演の題目は、「進化する金融政策:日本銀行の経験」。ゼロ金利制約を乗り越えるための4つの進化を挙げている。(1)金融政策の操作目標を、より長めの金利にシフトすること(長期国債買入れ、フォワードガイダンス)、(2)リスク資産の買い入れなどを通じて、リスク・プレミアムに働きかけること、(3)短期の名目金利にマイナス金利を適用すること、(4)人々のインフレ期待に働きかけることを通じて、実質金利を引き下げる。これらのアプローチは、いずれも日銀が辿ってきた道だ。

(1)と(2)は白川時代から取り組んでいたが、黒田日銀で買入れ規模が大きくなった。(4)は、2013年3月の白川総裁退任会見で、期待に働きかけることの危うさを語っていたことを思い出す。なお中曽副総裁は、現在のYCCについて、「副作用をできるだけ小さくしながら、最適な金利水準を実現していく必要」「必要であればイールドカーブの形状についても調整を行っていく方針」と語り、柔軟姿勢だ。

日銀は2013年1月発表の政府との共同声明で謳われた、2%の「物価安定目標」をできるだけ早期に達成するという文言の制約を受ける。とはいえ、2019年度頃の2%達成は絵に描いた餅だ。より実現的な政策議論を進めていくためには、2つの方法が考えられる。

1つは、政府がデフレ脱却宣言をし、2%は中期的な目標との位置付けに変えることだ。もう1つは、日銀が金融政策運営において、2%目標の自らの解釈を柔軟化させること(オーバーシュート型コミットメントの修正、新たなフォワードガイダンスの構築)だろう。新体制ではYCCの総括検証に加え、物価目標の解釈の柔軟化にもすぐに取り組んで欲しい。

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