次期日銀総裁に必要な資質と期待すること 自民党の圧勝で黒田総裁は続投なのか?

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安倍政権の長期安定化に伴い、市場では黒田総裁の続投説が高まろう。通常であれば、日銀正副総裁人事は年末年始の頃に佳境を迎える。そして国会同意人事として提出されるのは、2月下旬頃となる。今回、早くから続投説が流れるのは異例であり、アベノミクス3本の矢の1つである異次元緩和を、安倍政権が高く評価しているにほかならない。

次期総裁で焦点となる出口戦略

次期日銀総裁には、出口戦略について早急に議論を進めてもらいたい。現在の金融緩和の枠組みのままでは、いずれテクニカルな国債買い入れの限界、市場機能の低下、金融機関の収益減少などいろいろな壁にぶち当たっていく。黒田総裁には、2016年9月に導入した長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)について来春までの任期中に総括検証をして欲しいが、本石町(日銀本店)では焦ってやる雰囲気が感じられない。検証しないのであれば、次期総裁が最初の仕事として取り組むべきだ。

マイナス金利の副作用は、時間が延びるほど大きくなる。2018年度まで現状維持なら、保有債券のデュレーションが短い金融機関では赤字決算に追い込まれる可能性がある。マイナス金利の撤廃が無理ならば、せめてイールドを立たせることで、長短スプレッドを拡大させることが望ましい。異次元緩和は胆力のある黒田総裁だから成し遂げられた大転換だ。それを閉じる方向に持っていく、出口戦略を軌道に乗せるためにも、やはりかなりの胆力が必要であろう。

また、日銀総裁は金融政策決定会合での議長として、議論をとりまとめる重要な役割がある。黒田総裁になってから、議事要旨では賛成派と反対派(7月に退任した佐藤健裕委員、木内登英委員)が意見を交わして、議論が白熱する様子は感じられなかった。次期総裁には、議長としてもっと議論がかみ合う雰囲気づくりをして欲しい。9月に反対票を投じた片岡剛士委員は、10月会合で具体的な緩和強化策を提案する可能性がある。執行部の意向とは異なるため、黒田総裁は現在の緩和政策を粘り強く続けることを強調するだろう。

次期総裁に求める資質としては、金融・経済に関する知見は当然ながら、それ以外に豊富な国際的人脈、英語のディベート力、日銀という組織への理解という3点を挙げたい。

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