住宅ローン、ひそかに変わったお得の新常識 フラット35の制度変更で金利も引き継げる?
フラット35の制度変更によって比較の方法は多少変わったが、重要なことはどこから借りるかではなくこれから借りようとしている住宅ローンははたして問題なく返済できるかどうか、購入プランがライフプランと整合性が取れているか、という部分であることは伝えておきたい。
(※10月の制度変更では団信の保障内容も変更されているが、これは他行の団信と比較する形で改めて解説したい)
売却時に住宅ローンも引き継げる?
フラット35の制度変更は今年4月にも行われていた。それが「アシューマブルローン」の導入だ。これは従来フラット50では導入されていたが、フラット35でも利用できるようになった。
聞き慣れない名称だが、一言で説明すると「家を売った際に住宅ローンも引き継ぎが可能」な仕組みとなる。
「いったい何のこっちゃ?」という説明になるが、中古であろうと新築であろうと、家を買う際にはその時々の金利で住宅ローンを組むことになる。しかし、フラット35でローンを組んだ人が住宅を売却する場合、自身が組んだローンと同じ金利で買い手もローンを組むことが可能になる。10年後に金利が何%であろうと、今月のローンであれば1.36%で買い手は借り入れが可能、という説明になる。つまりは住宅ローン金利を同じ条件で引き継げる。
もちろん買い手側がローンを組むには審査に通る必要はあるが、将来金利が上昇していた場合に効力を発揮する。たとえば今月Aさんが5000万円の物件を購入して、10年後に4000万円で売却のケースを想定する。仮に10年後の住宅ローン金利が3%であれば、買う側であるBさんが1.36%でローンを引き継いで購入できることは極めて大きなメリットとなる。
4000万円の物件を頭金1割(借り入れは3600万円)で購入する場合、金利が1.36%ならば総額で4926万円、3%ならば6218万円と、1000万円以上の差となる(いずれも全期間固定、返済期間35年、頭金も含んだ支払総額)。金利上昇時にこれだけ差がつくということは、物件価格にもプラスに働くことは間違いない。これはあくまでシミュレーションでしかないが、金利が上昇するほど売却価格にプラスの影響が大きくなる。
通常、金利と不動産価格はシーソーゲームの関係にあり、近年のマンション価格上昇は金利低下による部分が極めて大きい。つまり金利が上昇した際は不動産価格に下落圧力がかかるが、それを緩和する効果がアシューマブルローンを利用した場合に見込めることになる。
アシューマブルローンの利用条件はフラット35と同等で、長期優良住宅の認定を受けた住宅で借り換え時の利用は不可という以外は特別な条件は課されていないが、取扱金融機関は2017年10月時点で23社とごく一部に限られている。
扱っている金融機関が一部に限られている理由は、金利が上昇した場合は当然のことながらアシューマブルローンがお得になり、金融機関からすればわざわざライバルを増やしかねないことが原因と思われる。
したがって今後も自社で長期固定の住宅ローンがない金融機関(信用金庫等)を中心に取り扱いが増える可能性も高く、手数料や金利水準だけでお得な住宅ローンを探しているとアシューマブルローンの存在自体に気づかないケースも出てくるかもしれない。
将来住み替えの可能性がある人は資産価値の高い物件を選びたいと考えているケースも多いが、立地や建物の質だけではなくローンの種類によっても売値が変わる可能性があることも考慮に入れておいたほうがいいだろう。
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