トヨタ系列も巻き込まれるEVシフトの衝撃

部品は4割減、楽観論もあるが時間の問題だ

EVはエンジンがいらないなど構造がシンプルで、ガソリン車に比べて部品点数が4割ほど減るとされる。ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏は「EVシフトで日本の部品メーカーが受けるダメージは大きい。特にエンジン関連の部品を扱う企業は深刻だ」と分析する。

日本の自動車産業は完成車メーカーを頂点として、部品メーカーをはじめとする関連企業との密接な関係を築く系列構造が強みだ。日産はすでに系列を解体しているが、日本のみならず、世界でも最大級の自動車メーカーであるトヨタの系列は脈々と栄えている。一方、EVでは部品メーカー間の高度な「すり合わせ」の要素が薄まり、その強みを生かせなくなる。

影響は部品業界だけにとどまらない。石油流通市場に詳しい東洋大学の小嶌正稔教授の研究によれば、EV普及を前提に試算すると国内スタンド数は2050年に現在のおよそ4分の1である8700カ所まで減るという。

ただ、渦中の自動車関係者の間では、急激なEV化が起きるという見方に対して否定的な意見が多い。

「EVは航続距離の短さや車両価格、充電インフラの課題が解決されていない。バッテリーの劣化の問題もある」(日系自動車メーカーのEV・HV<ハイブリッド車>開発担当者)。「フランクフルトモーターショーでもプレスデーが終われば、消費者向けにディーゼル車やHVが並んだ」(日系自動車メーカーの幹部)。

経済産業省の幹部も、「EVかガソリン車か、ALL or Nothingの議論ではない。英仏政府はガソリン車をどのように禁止にするのか、HOWの議論にまでは踏み込んでいない」と慎重だ。

世界中のさまざまな企業や調査機関が2030年時点の新車販売に占めるEVの比率を予測しているが、上はBNPパリバの26%から、下はエクソンモービルの1.6%まで、EV化の進むスピードについて議論の幅は広い。

いったん技術がテイクオフすれば変化は急激に訪れる

ただ、時間軸の問題で、EV化の大きな潮流は変えられないとの見方もある。長年EV研究に携わってきた慶応義塾大学名誉教授の清水浩氏の研究によれば、レコードがCDに、ブラウン管テレビが液晶テレビに取って替わり、普及したスピードはわずか7年だったという。

「いったん技術がテイクオフすれば変化は急激に訪れ、既存の産業は破壊的な影響を受ける。日本がテスラに先を越されたのは、日本企業がイノベーションのジレンマにとりつかれていたからだ」(清水氏)と警鐘を鳴らす。

今年7月までテスラで電池部門を統括したカート・ケルティ氏は、「もうEVの時代は来ている。今からそれが止まることはない」と述べる。

一方、EVの製造原価の半分を占める車載電池では、テスラに独占供給するパナソニックが世界で高いシェアを占める。電池部材である正極材や負極材、セパレーターなどは、いずれも日本企業が世界屈指の技術力を持つ。

EV最大のネックである航続距離を伸ばすために、主に車体向けの炭素繊維やアルミなど日本のお家芸である素材分野でも、目下、軽量化の開発競争が繰り広げられている。EV化は日本企業にとってチャンスでもある。

週刊東洋経済10月16日発売号(10月21日号)の特集は「日本経済の試練 EVショック」です。
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