イオンシネマが「調布」を旗艦劇場にする理由 設備だけでなく地域との連携でも"最先端"

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シアタス調布はトリエ京王調布のC館にある (撮影:尾形文繁)

「設備的にも、人材のリソースとしても、建設時点で取り入れられるものはすべて取り入れました。わたしたちにできることをすべて投入し、気合を入れて作ったことは間違いない」と、小金澤取締役は自負する。

最新シネコンに最新設備を導入するということはよくある話だが、業界1位のスクリーン数を誇るイオンシネマが、この調布の劇場をフラッグシップ館と位置づけているのには、もうひとつ理由がある。それは、調布市が「映画のまち」を標榜しているということだ。そして、そこにふさわしい映画館を作りたかったという理由が背景にある。

調布は、新宿から京王線の特急に乗れば、15分でたどり着くことのできる東京南西部のベッドタウンだが、そもそも多くの映画スタジオがあり、昭和30年代には「東洋のハリウッド」と呼ばれていた地域だ。現在も日活調布撮影所や角川大映スタジオ、そして40近い映画関連会社が軒を連ねている。市内には俳優の手形モニュメントや映画俳優之碑、調布映画発祥の碑なども建てられている。

「映画のまち」に映画館が存在しなかった

調布の駅前は「映画のまち調布」をアピールする看板やタペストリーなどの存在が目立つ(撮影:尾形文繁)

そんなこともあり、調布市は「映画のまち」を宣言。毎年3月には、「調布映画祭」を開催し、高校生の作品をプロの映画関係者が審査する「高校生フィルムコンテスト in 調布」など、映画に関連する施策を多く打ち出している。10月28日に開催する花火大会も、「映画のまち調布“秋”花火2017」と、シアタス調布の開業に合わせて、名称に「映画のまち」を加えている。

実は、駅前の調布パルコ内で営業していた「パルコ調布キネマ」が2011年に閉館して以来、長らく市内に映画館がない状態が続いていた。それだけに「シアタス調布」がオープンしたことは調布にとっても悲願であった。これにより、撮影所・現像所、そして劇場という、名実共に「映画のまち」調布を復権することになる。

再開発が進む調布駅の周辺も、映画フィルムを模した行き先案内板や、「映画のまち調布」と書かれた看板など、「映画のまち」一色で彩られている。調布市の映画に懸ける思いは格別だ。

9月29日に行われた同館のオープンセレモニーで、長友貴樹調布市長は「武者震いに似た感動を覚えた。東京でも屈指の設備を備えたシアターを作っていただき、感謝に堪えません」とコメント。そして、「調布は映画関連企業が40以上ある日本一の映画の街なのになぜ映画館がないのかと、市内外の皆さまから意見をいただきました。そういった不満もようやく解消される。行政でできることはなんでも応援したい」と調布市の全面バックアップを約束した。

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