イオンシネマが「調布」を旗艦劇場にする理由 設備だけでなく地域との連携でも"最先端"

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その言葉を裏付けるとおり、調布市では「シネマでお出かけサポート」という施策を年内いっぱいで実施する。これは中学生以下の子ども、75歳以上のシニア、そして障害者に「500円映画鑑賞補助券」を付与し、500円引きで映画を観賞できるというもの。これをきっかけにシニア層などに対して外出を促すほか、中学生以下の子どもたちに対して豊かな感受性を育んでもらい、将来、調布の映画関連企業で活躍する未来のクリエーターを育てたいという思いもあるという。

映画を軸にした地域発展の取り組みも進む。調布市商工会商業部会との協力により、映画の半券を提示すると飲食などの割引サービスが受けられる「半券サービス」を始めた。全国の「イオンシネマ」で同種のサービスを行う際は、入居する商業施設内のテナント内でのサービスが行われるケースがほとんどだったが、今回は調布駅周辺の商店街の中の190近い店舗が参加している。

地域連携のモデルケースを目指したい

オープニングセレモニーの様子。中央の男性が長友貴樹調布市長、右隣は「映画のまち調布」応援キャラクター・ガチョラ (筆者撮影)

地域住民とも良好な関係を保っているようで、長友市長は「やはり市民が待ち望んでいたということだと思う。東京でも屈指のシネコンができるということで、街の再生にもつながる。それとうれしかったのは、調布パルコが“祝開業!トリエ様、ようこそ調布へ”と懸垂幕をたててくれたこと。あれだけの施設ができるわけですから、周辺地域にも間違いなく来客があるのは間違いない。従来の店と、新しい店がパイを奪い合うのではなく、共存してやっていただけるのは本当にうれしいことです」と、街全体の盛り上がりに期待を寄せる。

イオンシネマも地域との連携には積極的だ。小金澤取締役は、「僕たちがずっと言っていたのは、地域の皆さんと一緒になって進めていきたいということ。トリエだけでなく、街全体でいろいろなことをやっていきたい。地域密着というのは、言うだけなら誰でもできる。本当の密着とは何か。市が抱えている課題と、われわれが抱える課題を一緒になって解決することは意外にできないことなので、ちゃんとやりましょうと議論を交わしてきた。ローカルが疲弊している中で、地方活性化の一翼を映画館が担えないか。そのモデルケースを調布でつくっていく」と、その思いを語る。

イオンシネマ シアタス調布は、設備だけでなく、劇場と地域とのかかわり方という点でも、フラッグシップとしての役割を果たしているといえるだろう。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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