「自民vs希望の党」は看板倒れで残念すぎる 党首討論は「3極」の争点が拡散、奇妙な舌戦に
2012年暮れの衆院選後、第2次安倍政権発足後の国政選挙(衆院1回、参院2回)での党首討論は首相の"独り舞台"だった。党首対論も代表質問もすべて首相中心で展開したからだ。しかし、今回は小池氏が"もう一人の主役"に躍り出た。結党宣言以来、メディアの解散・選挙報道は小池氏が主役となり、首相の影は薄い。党首討論でも小池氏の出番は首相に迫り、結果の報道も首相と小池氏の"並立"が際立っている。
ただ、10日の公示以降はメディアの対応が変わる。公示後の選挙報道は「公平・中立」が大前提となるため、これまで小池氏偏重だったテレビの情報番組なども投開票日までは方針変更を余儀なくされる。風を巻き起こしての"空中戦"で集票を狙う小池氏にとって「やりにくい状況」(自民選対)となることは避けられない。
公示直前にメディアが実施した全国世論調査では希望の党の失速が目立つ。読売新聞調査(7~8日)での「比例選投票先」では自民が32%とほぼ横ばいだったのに、希望は13%と前回調査から6ポイントも減り、希望から「排除」されて急きょ結党した立憲民主党が公明(5%)、共産(4%)両党を上回る7%で3位に躍り出た。
この数字を見る限り小池氏の掲げる「政権交代」は選挙中に"新たな風"でも吹かない限り絶望的にみえる。上昇するとみられていた投票率も「2009年の政権交代選挙のような熱気が感じられないので、前回からの微増にとどまるのでは」(選挙アナリスト)との見方が広がる。選挙戦本番では「小池劇場による"熱狂"が息切れする」(同)との判断からだ。
「ステルス」作戦と「無言」ににじむ不安
その一方で、自民党はこれまで選挙では事前に公表してきた首相の遊説予定を非公表にしている。いわゆる「ステルス作戦」だ。7月都議選の最終日での都内の街頭演説で「安倍辞めろ」などのプラカードを掲げてシュプレヒコールを繰り返す一部の聴衆に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫んだことが自民惨敗につながったことへのトラウマからだ。「乱気流の選挙戦」だけに首相の不安も浮き彫りにしている。
大手の新聞・通信社は公示日から数日の間に全国世論調査に基づく「選挙結果予測」を相次いで公表する。もちろん投票日まで情勢は日々変化するが、"台風の目"の希望の党に勢いがみられなければ、「選挙戦の熱気は一気に冷める」(自民選対)可能性は少なくない。その場合「首相の逃げ切りで、淡々と安倍政権が続く」(自民長老)ことになる。まさに「大山鳴動ネズミ一匹」の結末だ。
記者クラブの党首討論前の控室での揮毫で、首相は「愚直に 誠実に」、小池氏は「希望」と書いた。登壇前の緊張の中で首相は山口氏らと談笑していたが、小池氏は通信機器をいじる以外は、無言でじっと壁をにらんでいた。永田町で「緑のたぬき」とも「魔女」とも揶揄される小池氏に、果たして「大逆転のウルトラC」が残っているのかどうか…。
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