「自民vs希望の党」は看板倒れで残念すぎる 党首討論は「3極」の争点が拡散、奇妙な舌戦に
討論は各党首が直前に「訴えたいこと」を自書したフリップを掲げての"戦闘宣言"でスタート。首相が「この国を守り抜く」、小池氏が「国民ファーストの政治で日本に希望を」と「2強対決」を強調する一方、第3極勢力は「安倍暴走政治に退場!」(志位氏)「まっとうな政治」(枝野氏)と安倍政権打倒をアピールした。
首相の解散表明直前の小池氏による希望の党結党で「大乱戦」となった選挙戦だが、公示前の論戦での注目の的は小池氏の出馬問題。記者団の質問に「100%出ない。当初から言っている」と繰り返し、党首討論でも「都知事の立場は変えない」と出馬を否定し続ける小池氏だが、最新の世論調査で「希望の党失速」の数字も出る中、「超サプライズで公示日に突然出馬するウルトラCも」との憶測はなお消えない。永田町で「魔女」とも呼ばれる小池流メディア戦略に「引っ掻き回されている」(自民幹部)のが実態だ。
10月末召集とみられる衆院選後の特別国会ではまず、首相指名選挙が実施される。しかし「政権交代」を目指す野党第1党の党首が都知事では、希望の党の首相指名候補は小池氏以外となる。国会議員というのが首相就任の前提だからだ。このため一連の党首討論でも「なぜ出馬しないのか」「首相指名候補は誰にするのか」との質問が相次いだが、小池氏は過去に自民党が社会党(当時)の村山富市委員長を首相に担ぐという"禁じ手"で自社さ連立政権をつくったことも引き合いに出し、「選挙の結果をみてから」と明言を避ける。
しかし、「安倍vs小池」とされる選挙戦なのに、政権交代時の首相候補が「小池氏以外」というのでは有権者は戸惑うばかりだ。永田町では「小池氏は選挙後に自民党に手を突っ込んで反安倍の石破氏を担いで『大連立』を画策しているのでは」などの憶測も広がり、小池氏もあえて完全否定はしない。5年前の自民党総裁選で小池氏が首相を裏切る形で石破氏の支持に走った過去もあるからだ。
小池氏の狙いは「1強首相」の追い落とし?
ただ、不出馬宣言と首相指名をめぐる党首討論などでの小池氏の発言は「政権交代」を視野に入れていないようにもみえる。希望の党の立候補予定者は9日の同党総決起大会で236人と発表された。一応は政権交代の前提となる衆院過半数(233人)を超えてはいるが、供託金事前納付などの手続面からみても、小選挙区ではなく比例代表名簿の積み上げでの「帳尻合わせ」とみられる。
小池氏自身も「すべての候補が当選するわけではないし、(民進党系の)無所属の方も何人もおられるので…」と口ごもるが、永田町では「そもそも希望の党での過半数はおろか、与党の過半数割れも想定していないのでは」(選挙アナリスト)との見方も広がる。
小池氏は党首討論などで「安倍1強打倒」という言葉を多用する。これも「敵は安倍首相で自民党は必ずしも敵とみていないのでは」(公明幹部)との憶測を生み、「石破大連立政権」説を広げる原因ともなる。記者クラブでの代表質問で首相に対し「自民50議席減が首相退陣のめどでは?」との質問が出た。首相は「政権選択選挙だから与党過半数が勝敗ラインで、与党が勝てば私が首相指名を受ける」と切り返したが、これはあくまで建前論にもみえる。
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