――信治郎のでっち奉公時代の話が若い人には新鮮では。
20~30代のビジネスパースンが新聞連載時によく読んでいたらしい。こんなことが現代にあったらブラック企業になる話だし、社内ハラスメント会議で取り扱われてしまう。まだ悲惨でない書き方をしているものの、大阪船場の話であり、今の時代とは何ともそぐわないことになる。
それらは終身雇用を大前提として成り立っているから、現代の雇用方法と相いれるかどうか。また、家族経営、株式公開の是非も、どれだけの人がこの本を支持するかでわかるのではないか。
――登場人物の層が厚い。
ページ数をあまり割けなかったが、信治郎の主人・2代目小西儀助は20歳から店の身代を支える人物として特筆に値した。薬草を刻むシーンが出てくるが、そんな大層なことなのかと思って調べてみると、刻み方にもいろいろある。薬草によって金属はダメで、木のナイフで削るとか。調べだすと1週間以上かかり、それを収録すると薬の小説になってしまう。小西儀助は小西屋自体が傾いていたところを3年で立て直す。ビールも早くに大枚をはたいて開発に取り組んでいる。
――この小説は現代のビールのシェア15%達成で終わっています。
目指している3割に行くには、これからも大変だ。ウイスキーは醸造に5年や10年かかり、もはや10年ものの原酒はないに等しい。今売れているのはブレンドウイスキーであり、ビールは2週間でできる。それはもうウイスキーを造る側に言わせれば、これほどたやすいものはない。
暗闇の中に市場があることがなぜわかったのか
――タイトルの『琥珀の夢』はビールにも当てはまる?
琥珀の色はウイスキーだけではなく、ビールも指している。今やすべての社が先行の、ドライで軽いビールに追随している。これに対して(サントリーは)麦芽100%で熱処理をしない方法を研究し続けた。大事なのは、信治郎はなぜ100人が100人反対したウイスキー造りをやり続け、「彼にだけ暗闇の中に市場があることがわかっていた」と東洋製缶の高碕達之助に言わしめたのか、だ。
――あくまで小説ですよね。
信治郎の銅像の序幕式に迎えられた松下幸之助は、そのあいさつで自転車店の小僧のときに信治郎に頭をなでられた話を開陳している。すべての日本人の「根」は船場に代表される人間の鍛え方にあるのではないか。それを書ければ日本人を書けると取り組んだ。
――小説に限らず、なぜ「伊集院本」は人気があるのか自己診断を。
中高年になると言いたいことも言えない立場になるが、それを代弁しているからではないか。
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