ミャンマーが危機に陥っている。仏教徒が圧倒的多数を占める同国では、軍がイスラム系少数民族・ロヒンギャを弾圧、多数が難民と化している。深刻化するロヒンギャ問題によって、ミャンマーの民主化プロセスは阻害され、事実上の指導者、アウンサンスーチー氏の名声は回復不能なまでに失墜しようとしている。
ミャンマー政府は何十年にもわたって、ロヒンギャの存在を認めてこなかった。ロヒンギャは同国人口の2%を占めるが、市民権を拒まれ、住民としての基本的権利すら与えられてこなかった。こうした全面的差別が民族浄化へとエスカレートしたのは8月のことだ。ロヒンギャ武装勢力が軍の駐留施設を攻撃したのをきっかけに、掃討作戦が開始されたのである。
あのスーチー氏はどこへ行ってしまったのか
この人道的危機を阻止するどころか、悪化させたのがスーチー政権だ。確かに、弾圧を指揮する軍はスーチー氏の支配下にない。だがスーチー政権は、国連機関が緊急物資を届けるのを妨害。国連人口基金、国連難民高等弁務官事務所、ユニセフによる被害地域での活動は停止に追いやられた。
民主化のために戦い、ノーベル平和賞という国際的な名声を得た、あのスーチー氏はどこへ行ってしまったのか。同氏が率いる国民民主連盟(NLD)が2015年の総選挙で勝利したことにより、旧ビルマにおける50年もの軍事独裁に終止符が打たれ、新しい時代が訪れるものと思われた。
しかし、ロヒンギャ迫害が続く中、ミャンマー民主化への信頼は急速に失われつつある。議会議席の25%を押さえる軍はスーチー氏の大統領就任を阻止し、既得権集団とも共謀しながら、同氏の職務権限に制約を加えている。
軍は今、民族的・宗教的マイノリティーのロヒンギャを迫害し、殺害までしているが、これらはすべて政治的な理由からだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら