不動産再編の黒衣 プロスペクトの素顔
不動産中堅のアゼルとグローベルスが来年1月に合併することで基本合意した。前者は東京南部を地盤に建設部門も持ち、売上高は596億円。ただ、赤字続きだ。後者はかつて大京傘下のマンション専業で、売上高は141億円。これだけを見れば“弱者連合”が誕生したにすぎない。だが、両社の大株主に目を転じると、構図は一変する。ともに外資系ファンド、プロスペクトの影響下にある企業だからだ。
REITも買い占め にわかに増す存在感
米国・ハワイに本拠を置くプロスペクトは1994年に設立。創業者のカーティス・フリーズ会長は日興証券を振り出しに日本市場で経験を積んだ人物。直近の運用資産残高は約1500億円。そのすべてを日本国内で運用、しかも大半が不動産関連と専門性が高い。小型株を中心に20社近くに投資。合併する2社の保有比率が4割前後にも上るなど、主要株主となっている先も多い。
さらに注目されるのは、J‐REIT(日本版不動産投資信託)への積極的な資金投下である。2006年11月にはロンドンAIM市場に専門ファンドを上場、約1億ポンド(約220億円)を調達してもいる。投資先は10銘柄以上。資産規模が数百億円レベルの小型REITが中心で、投資口を3割以上買い占めた先もある。自らもプロスペクト・レジデンシャル投資法人を運用する。
「日本の不動産会社は多すぎる。規模を大きくして効率化を進める必要がある。合併には賛成だ」。再編推進論者のフリーズ会長はそう話す。アゼルとグローベルスが接触したのは7月。関係者によると、そのきっかけをつくったのは、プロスペクトだった。直前にはアゼルに対して社長以下3人の役員を派遣、地ならしはできていた。アゼルは今年9月に39億円の転換社債償還を控える。財務面で大きな課題を抱える中、主力銀行出身の前社長らがプロスペクトに経営を投げた格好だった。
両社の協議はすぐに合併へと進展。マンション管理や建設部門を持つアゼルと、それらを持たないものの大京流の販売力を誇るグローベルスには、相互補完性もあった。この間、プロスペクトが協議に介入することはなかった。「無理やりやろうとしたら失敗する。銀行など関係者のコンセンサスがなければ進まない。だから私個人で何かをする必要はなかった」。アクティビスト(物言う株主)を自認するフリーズ会長だが、手法は「日本的」だ。プロスペクトは過去に大京や藤和不動産をめぐる支援候補に水面下で名乗りを上げたこともあったが、その時は相手にもされなかった。が、今は銀行からの相談が増えるなど、その存在感が増しているのは間違いない。