大胆試算「リニア新幹線」はどこまで儲かるか

大阪開業で売上26%増でも巨大投資が重荷に

償却期間については、鉄道事業の減価償却資産は国が償却年数のガイドラインを定めている。鉄道車両(電車)が13年、信号機が30年、鉄筋コンクリート製のトンネルが60年といった具合に、設備ごとに耐用年数が決まっている。

JR東海は収支予測に用いた減価償却の方法や金額を開示していない。そこで、今回はリニアの設備全体を一括して30年で償却するという前提で、定率法と定額法の両方のケースでJR東海の収支を試算してみた。

定額法の場合は当初から2000億円を超える経常黒字。売上高の上昇に合わせ緩やかに経常増益が続く。2038年の大阪開業では売上高が増える一方で減価償却費も増えるので、それほど大きく利益水準は上がらない。それ以降は売上高が横ばいの一方、費用は物価上昇分だけ増えるので、利益水準は下がる。

一方で、定率法の場合は、初年度は経常赤字。ただし減価償却費が年々減っていくので、2030年度には黒字化。その後の利益は右肩上がりになる。大阪開業時に減価償却費がかさみいったん利益水準が下がるが、定率法の強みを生かし、その後の利益は回復に向かっていく。

リニアは「ペイする」のか

2013年にJR東海の山田佳臣社長(当時、現会長)が、リニア計画について「絶対にペイしない」と発言したことが物議を醸した。

東洋経済作成の収支予測を見るかぎり、リニア開業によってJR東海の経営が長期的に揺らぐということはなさそうだ。とはいえ、開業から15年を経ても経常利益は3000億円前後で、2016年度の5639億円には及ばない。東海道新幹線単独のときよりも利益水準が下がっているという点で、リニアは確かにペイしていない。

JR東海は、リニア建設は東京―名古屋―大阪という大動脈の二重系化が目的であり、金銭的な採算性を追求するものではないとしている。利用者にとっても新たな交通手段は歓迎できるものかもしれない。

一方、株価を気にする投資家にとっては不満かもしれない。あらゆるステークホルダーに対してリニアは成功したと胸を張って言えるのは、やはりリニアがペイするようになってからだろう。それは大阪開業からさらに20~30年経って、全区間の減価償却が一段落してからという、遠く先の話になりそうだ。

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