そこで若手社員が、負い目を感じずに、ストレスなく定時で退社する技術を、前出の吉田さんのアドバイスのもと、探ってみた。「そんな心配はいりません。うちは毎日、ノー残業で帰ることができます」というすばらしい会社にお勤めの方々は、どうぞスルーしていただきたい。
「終業時間なので、帰ります……」「今日、大切な用事があって……お先に失礼します」
本来、これでいいのだが、こうした言葉を放った途端、上司や先輩から微妙な空気が発せられるかもしれない。琴線に触れる原因は、「定時なので」「大切な用事で」という退社の理由ではない。彼らは「やるべきことをやったうえで退社しているのか?」と疑問に思っているからだ。
「極端にいえば、上司や先輩は部下のプライベートな用事なんてどうでもいいと思っている。しかし、部下が携わっている業務の進捗状況やその内容に関しては、当然、関心が高く、不安も抱いているものです。ようは手がけている仕事が進んでいない、あるいは進んでいるのか分からない状況で『定時なので帰る』『用があるので帰る』となると、ひっかかる。部下の“自分都合“ばかり押し出された気がして、腹立たしく感じる人も多いわけですよ」(吉田さん)
気持ちよく帰るのに必要なのは「ホウレンソウ」
ということで、実は対策はカンタンだ。
いってしまえばホウレンソウ(報告・連絡・相談)。上司の思惑を先回りして「今抱えている仕事はどんな状況か」と進捗状況をまず伝える。そして、「納期までにはこんなスケジュールですすめる予定だ」と、今後の予定も示す。そのうえで「なので、本日はお先に失礼させていただいてもよろしいですか?」と続けるのだ。
「たとえば『今日中には取引先から返事のメールが届くはずなのですが、何時になるかわからないそうです。先方にも伝えてありますが、朝早めに出勤して対応するようにします。よろしいでしょうか?』といった具合です。まず具体的にかかえている仕事と、その進捗状況を報告したうえで、現状を連絡する。これだけでも上司は安心します。こうした進捗状況を『ホウレンソウ』でしっかり伝える。大事なのは、仕事をしているだけじゃなくて、上司や先輩にその状況を伝えることなんです」(吉田さん)
最後を『よろしいでしょうか?』といった具合に相談の形で終わらせるのもポイントだ。質問することで「上司・先輩の意向を尊重していますよ」というスタイルでのコミュニケーションを図ることができる。いきなり自分都合の定時退社をアピールするよりは、断然、スムーズに「そうか。じゃあ、明日朝、頼むよ!」と返してくれる確率は高まるはずだ。
さらに上級テクとして、こんな手もある。
「ある部下に夕方、突然、仕事をふったら『了解です。これだとざっと3時間くらいで出来ると思うので、21時までには仕上げられますね。といいつつも今月は残業時間が45時間を超えそうなギリギリなところで……。間に合うなら、明日午前中の対応でもいいですか?』と返されました。もちろん了承したし、感心しましたね。」(IT・40歳)
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